改訂新版 世界大百科事典 「六句義」の意味・わかりやすい解説
六句義 (ろっくぎ)
ṣat-padārtha
インドのバイシェーシカ学派が主張する六つの原理。〈句義〉は,〈語の対象〉を原義とするが,文法学派のパタンジャリが,これを名詞,形容詞,動詞などという品詞に対応させたことをきっかけとして,この学派では,〈原理〉〈カテゴリー〉として考えられるようになった。実体,性質,運動,普遍,特殊,内属の六つを数える。たとえば,〈白い牛が歩く〉という事がらにおいて,牛が実体,白さが性質,歩行が運動,牛に存する牛性が,いっさいの牛に対しては普遍,それ以外のものに対しては特殊,さらに,白さや歩行や牛性が牛に対して有している関係が内属である。なお後世,これに無を加えて七句義とすることもある。また,《勝宗十句義論》では十句義を数えるが,これは例外である。
執筆者:宮元 啓一
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