北朝鮮の核実験(読み)きたちょうせんのかくじっけん

共同通信ニュース用語解説 「北朝鮮の核実験」の解説

北朝鮮の核実験

北朝鮮は2005年2月に核保有を宣言し、06年10月、北東部の豊渓里プンゲリで初の地下核実験を行った。その後も09年5月、13年2月、16年1、9月に実施。17年9月3日には6回目を強行し、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)搭載用の水爆実験に成功したと発表した。爆発規模は毎回大きくなっており、日本政府は6回目について約160キロトン(TNT火薬換算)だったとの推定値を公表した。米軍広島に投下した原爆は16キロトン、長崎は21キロトンだったとされる。

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知恵蔵 「北朝鮮の核実験」の解説

北朝鮮の核実験

北朝鮮の朝鮮中央通信は2006年10月9日、「我々の科学研究部門で9日、地下核実験を安全に成功裏に行った」と伝えた。韓国大統領府は、同日午前10時35分(日本時間同)ごろ、北朝鮮北東部の咸鏡北道(ハムギョンブクト)周辺で地震波を感知した、と発表した。吉州郡(キルジュグン)豊渓里(プンゲリ)付近の地下核実験場とみられ、韓国地質資源研究院はマグニチュード(M)3.58ないし3.7、日本の気象庁はM4.9、米地質調査所はM4.2を観測したとした。「爆薬800トン相当の非常に低い威力で、核の連鎖反応が途中で止まった不完全爆発か」とか、「実験は失敗だった」といった見方も出たが、ネグロポンテ米国家情報長官は同月16日、「採取した大気から放射性物質を検出した。地下核実験の実施が確認された」と述べた。同年10月末から訪朝した米国のヘッカー元ロスアラモス国立研究所長は11月15日の記者会見で北朝鮮高官や核施設責任者との面談結果を明らかにした。それによると、北朝鮮側はプルトニウム型核爆弾の実験だったと認め、ヘッカー元所長は「初期型の単純な設計の核爆発装置を使い、規模をTNT火薬4キロトン相当にして意図的に小さくしようとしたが、1キロトン規模に終わった可能性が大きい」と分析し、「部分的な成功だったとみるのが妥当」との判断を示した。北朝鮮は実験直前に中国に対して4キロトン規模だと通知しており、ある程度の威力制御技術を持っていることもわかった。地下核実験は、1998年5月にインドとパキスタンが相次いで実施して以来である。北朝鮮は05年2月10日に外務省声明を発表し、そのなかで「自衛のために核兵器を製造した」と述べ、初めて核保有を宣言していた。また、核実験6日前の06年10月3日の外務省声明では、米国の「核戦争脅威制裁圧力」などを強く非難し、「自衛的な戦争抑止力を強化する新たな措置を取る」として、「科学研究部門で今後、安全性が徹底的に保証された核実験を行うことになる」と事前に言明していた。国連安全保障理事会はこの「予告声明」に対して6日、「深刻な懸念」を表明し非難する安保理議長声明を全会一致で採択した。北朝鮮が9日に核実験を強行すると、安保理は北朝鮮に対する制裁論議に入った。日本が議長国を務め、強制措置を認める国連憲章第7章(平和に対する脅威・平和の破壊および侵略行為に関する行動)のうち、41条(非軍事的措置)にとどめるか、42条(軍事的措置)の可能性にも言及するかなどで調整が続いた。中ロに配慮して、「憲章7章下の行動」であることと、それも経済制裁など非軍事的措置を規定した41条に基づく措置だと併記する妥協ができ、14日に制裁決議が全会一致で採択された。安保理で北朝鮮に対する制裁が決議されたのは初めてだ。北朝鮮の大量破壊兵器計画に関連する物資や技術、資金の流れを止めることと、北朝鮮最高指導部を狙った「ぜいたく品の禁輸」なども盛り込まれた。ただ、07年10月現在、安保理内の制裁委員会に制裁の実施問題で報告してきた国連加盟国は計192カ国のうち72カ国、そこには「制裁実施には至っていない」とする報告も含まれており、国際社会が一致して北朝鮮制裁に参加しているわけではない。日本政府は既に、北朝鮮が弾道ミサイル発射実験をした06年7月5日、独自の制裁措置9項目を決めた。北朝鮮の貨客船・万景峰(マンギョンボン)号を半年間入港禁止とし、北朝鮮当局者の入国や日朝間チャーター便の乗り入れを認めないことなどだ。さらに核実験4日後の10月13日には、独自制裁の強化・追加を閣議決定した。実施期間を6カ月として北朝鮮籍船の全面入港禁止、北朝鮮からの全面輸入禁止、北朝鮮人の入国禁止が柱だ。日本政府は07年4月と同10月、これら独自制裁を半年ずつ延長した。自民党有力者などから、日本も核武装論議を封ずるべきではないとする声が上がり、内外から懸念を招いたりもした。核実験の目的だが、北朝鮮は金正日(キム・ジョンイル)体制維持の手段として核兵器を位置づけており、核保有が本物であることを証明する必要がまずある。核保有国としての立場と核抑止力を誇示することを狙った。さらに、中国マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)で凍結された北朝鮮関連口座などを巡って米国との関係が膠着(こうちゃく)状態に陥っているなか、核実験をすることで米国を焦らせ、北朝鮮との直接協議に引き出す思惑もあったのは間違いない。結果として、実際にブッシュ米政権は北朝鮮への対応姿勢を根本的に変え、07年1月からの米朝直接協議につながった。

(小菅幸一 朝日新聞記者 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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