ラムサール条約(読み)らむさーるじょうやく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラムサール条約」の意味・わかりやすい解説

ラムサール条約
らむさーるじょうやく

湿地のもつ経済上、文化上、科学上の価値を認識するだけでなく、動植物、とくに水鳥の生息地として確保すべくつくられた国際条約。正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約Convention on Wetlands of International Importance especially as Waterfowl Habitat」という。水辺、湿地wetlands(湿原、沼沢地、干潟水域などさまざまなタイプの水辺の環境)は、ともすれば安価に開発できる場所として、経済活動の犠牲にされ失われてしまうことが多い。また、湿地や浅い水辺は周辺に人がすむことが多く、水の汚染があり、そこに生息する鳥類は減少し続け、とくに体の大きいものはその傾向が顕著である。そこで、1971年2月2日にこの条約が作成されたが、その会議の場所がイラン北部カスピ海沿岸の町ラムサールRamsarであったことから、ラムサール条約とよばれることが多い。この条約が発効するためには7か国の署名加盟)が必要であり、オーストラリア(1974年5月8日)以降、フィンランドノルウェースウェーデン南アフリカ共和国、イラン、ギリシア(1975年8月21日)までの7か国の署名によって、その4か月後の1975年12月21日に発効した。日本は、1980年(昭和55)6月17日付けで、本条約の寄託機関である国連教育科学文化機関(ユネスコUNESCO)事務局長に加入書を寄託し、その結果、条約第10条の2の規約により、4か月後の同年10月17日に発効し、25番目の締約国(条約加入国)となった。また、1993年6月には、第5回締約国会議の開催地(釧路(くしろ))となった。2019年6月時点で、170か国が締約国となっている。

 この条約は前文と12条からなっている。このうち第2条の4に、締約国はそれぞれ少なくとも一つの湿地を登録する必要を記している。日本では、1980年の加入時に北海道の釧路湿原を登録し、2019年6月時点の登録地は52か所、総面積15万4696ヘクタールである。

 2019年6月時点で、世界では2372か所、総面積2億5256万5074ヘクタールの湿地が登録されている。

[柳澤紀夫 2015年10月20日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ラムサール条約」の意味・わかりやすい解説

ラムサール条約
ラムサールじょうやく
Ramsar Convention on Wetlands

自然保護を目的とする最初の国際条約。正式名称「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」。国際湿地条約水鳥湿地保全条約ともいう。1971年イランのラムサールで採択された。締約国は,渡り鳥などの水鳥の生息地として重要な湿地を登録し,その保全をはかることを義務づけられる。1974年オーストラリア北部ノーザンテリトリーのコーバーグ半島が重要な湿地として初めて登録され,2023年1月現在締約国数は 172,登録湿地数は 2471で,総面積約 256万km2に上る。日本は 1980年に加盟,タンチョウの生息地である北海道の釧路湿原(1980。→釧路湿原国立公園)を皮切りに,1985年に宮城県の伊豆沼・内沼,1989年に北海道のクッチャロ湖,1991年に北海道のウトナイ湖が登録された。1993年には釧路市で第5回締約国会議が開かれ,新たに北海道の霧多布湿原厚岸湖・別寒辺牛湿原,千葉県の谷津干潟,石川県の片野鴨池,滋賀県の琵琶湖の 5ヵ所が追加された。2023年1月現在の日本の登録湿地は 53ヵ所。

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