日本大百科全書(ニッポニカ) 「半導性ガラス」の意味・わかりやすい解説
半導性ガラス
はんどうせいがらす
semi-conducting glass
電気伝導性をもつ特殊ガラスで、酸化物系とカルコゲン化物系(ここでは硫黄(いおう)、セレン、テルルをカルコゲンという)のガラスがある。一般にガラスは電気の絶縁体で、常温における比抵抗は、ソーダ石灰ガラス(ソーダライムガラス)で1012~1013Ω・cm、鉛ガラスで約1018Ω・cmと高抵抗を示すが、リン酸バナジウム系やカルコゲン化物系ガラスは比抵抗が小さく、とくに後者ではソーダ石灰ガラスの10億分の1、鉛ガラスの1000兆分の1くらいのものまである。また2000年ごろに発明されたインジウム・ガリウム・亜鉛系酸化物ガラスは、アモルファスシリコン以上の高い電気伝導性と移動度を示し、薄型テレビの薄膜半導体として実用化が始まりつつある。ガラスでありながら高い電気伝導性を示すのは、電気伝導が普通の絶縁性ガラスではイオンによって行われるのに、半導性ガラスでは電子によるためである。
カルコゲン化物ガラスのなかにはスイッチング作用を示すものがあり、常態では のOPに沿って絶縁性を示すが、電圧がPを超えるとABを経てOBのような伝導性に変わる。この状態はパルス電圧で元の絶縁性に戻るから、スイッチング素子、記憶素子その他応用範囲が広く、また大容量の光メモリー材料にもなる。カルコゲン化物ガラスは一般に溶融温度が低く、また赤外線は通すが可視光線を通さないものが多い。
[境野照雄・伊藤節郎]
『功刀雅長・長坂克巳・加藤悦朗著『無機材料』(1980・共立出版)』