セレン(読み)せれん(英語表記)selenium

翻訳|selenium

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セレン」の意味・わかりやすい解説

セレン
せれん
selenium

周期表第16族に属し、酸素族元素の一つ。俗称セレニウム。1817年、スウェーデンのベルツェリウスが硫酸工場の鉛室泥中の赤色物質から発見し、ギリシア語の月を意味するseleneにちなんで命名した。すでに発見されていたテルル(ラテン語で地球の意味)との対応によるものといわれ、また、燃えるとき月光に似た青白い炎をあげることによったともいわれる。

 単体で産出することはほとんどなく、金属のセレン化物として硫化物に伴って産出することが多く、これら金属製錬の副産物として得られる。たとえば、銅の電解精錬のときの陽極泥ソーダ灰とともに焼いて亜セレン酸ナトリウムとして分離し、二酸化硫黄(いおう)で還元しセレンを得る。粗セレンは水素中で熱してセレン化水素とし、これを1000℃に強熱して分解すると純セレンが得られる。さらに純度の高いものは帯域融解法で得られる。市販のガラス状セレンを加熱してからゆっくりと冷却すると灰黒色の金属セレンが得られ、二硫化炭素溶液から結晶させると赤色の結晶セレンが得られる。

 酸素中では青色の炎をあげて燃え二酸化セレンとなる。金属セレンに光を当てると著しく導電性を増し、遮るとただちにもとに戻るので、光電装置として用いられる。電子写真用、感光材料コピー機複写機)に用いられる。またガラス工業での脱色着色剤整流器として広く用いられるほかに、顔料薬品触媒、ゴム硬化剤、マグネシウム合金防食用などに用いられる。セレンおよびセレン化合物は有毒である。

[守永健一・中原勝儼]



セレン(データノート)
せれんでーたのーと

セレン
 元素記号  Se
 原子番号  34
 原子量   78.96±3
 融点    金属セレン,217℃
       結晶セレン,144℃
 沸点    684.9℃
 比重    金属セレン,4.79
       結晶セレン,4.4
 結晶系   金属セレン,六方
       結晶セレン,単斜
 元素存在度 宇宙 70.1(第28位)
          (Si106個当りの原子数)
       地殻 0.05ppm(第66位)
       海水 0.2μg/dm3

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セレン」の意味・わかりやすい解説

セレン
selenium

元素記号 Se ,原子番号 34,原子量 78.96。周期表 16族,酸素族元素の1つ。 1817年に J.ベルセーリウスによって発見された。地殻存在量 0.05ppm,海水中の存在量 0.090μg/l 。硫化鉱に伴われて産出するので,硫酸製造,銅製錬工業の煙塵や電解槽の陽極泥などが主要原料であり,正鉱石はほとんどない。単体には多くの同素体があるが,定融点を示すものは赤色セレンだけである。液体は褐赤色,685℃で沸騰し,暗赤の蒸気を出す。水酸化アルカリ溶液,シアン化カリウム溶液,亜硫酸カリウム溶液に可溶。空気中で燃焼し,特有の腐敗臭を発する。酸化数-2,4,6。赤ガラス製造用,整流器,セレン光電池,半導体,電池,ゴムの加硫剤,有機化合物の脱水素などに使用される。ある種の有機セレン化合物は写真の増感剤となる。

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