日本大百科全書(ニッポニカ) 「厨事類記」の意味・わかりやすい解説
厨事類記
ちゅうじるいき
平安末期から鎌倉期末にかけての食饌(しょくせん)の旧儀故実(きゅうぎこじつ)を伝えた好著。文中に永仁(えいにん)3年(1295)の記事があり、そのころの本らしい。『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』に収録されている。内容は、宮中の昼・夕二度の御膳(ぜん)の据え方や献立、食器の寸法などの解説と続き、調備部で料理法に簡単に触れ、さらに調備故実でやや詳しい料理法が載っているが、調備部までの漢文が、ここからは片仮名書きの和文になっている。調味料の酢、酒、塩、醤(ひしお)、色利(いろり)(大豆または鰹(かつお)を煎(せん)じた汁)などは食膳に別に盛られ、喫食者が自分で調味する風習だったことがわかる。8種の唐(とう)菓子なども説明されていて、食物史のうえでたいせつな資料である。
[小柳輝一]