…主としてキリスト教やイスラムのような一神教の世界で発生し,重要視された。仏教文化圏では,大衆の苦難をわが身に引きうける受苦(菩薩行)の思想が生みだされたが,死の強制を引きうける殉教という考え方は育たなかった。キリスト教のなかでも殉教martyrdomをすぐれた徳行としたのはカトリック教会であり,とくにキリスト教徒迫害の時代に信仰を守るために死を選んだ者を殉教者martyrとしてたたえた。…
…つまり〈感情〉が強まりそれがはっきり身体に現れるほどになったとき〈情動〉と呼ばれ,またさらにいっそう激化して感情の自然の流れがせき止められ苦悩にさらされるようになるとき〈情念〉と呼ばれる。だが情念の問題は,それが同時に〈受動〉〈受苦〉〈受難〉を意味することに示されるように,心理学を超えて,もっと広くてダイナミックな人間論的な広がりをもっている。そこで,情念がなぜ同時に〈受動〉〈受苦〉〈受難〉などを意味しうるかであるが,それを明らかにするにはどうしても語源にさかのぼることが必要である。…
※「受苦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」