…材料そのものも大半は自家製造であったから,粒度の異なる粉をつくるだけでも,新しい技術とより多くの労力を必要としたはずであり,室町中期ころから寺社門前や盛場,あるいは主要街道筋で名物の餅やだんごを売った茶店,京都でいえば北野の粟餅(あわもち),賀茂の御手洗(みたらし)だんご,清水坂の炙餅(やきもち)その他,東海道では遠江日坂(につさか)の葛餅や駿河宇津谷(うつのや)峠の十(とお)だんごなど《毛吹草》に見えるようなものとは,技術も設備も次元を異にする本格的な菓子屋が三都などの大都市には成立したのである。江戸ではそうした店はほぼ例外なしに京菓子司を称し,桔梗屋河内,丸屋播磨,鈴木越後,金沢丹後,鳥飼伊勢などと受領名(ずりようめい)を名乗り,禁裏,幕府,諸大藩,大寺社などの御用をうたうようになった。ちなみに京菓子は京風の上菓子,つまり高級な菓子の意であり,各店は食味はもとより,姿や彩りの美しさや文学的なみやびな菓銘を競うようになった。…
※「受領名」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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