改訂新版 世界大百科事典 「古代プロイセン語」の意味・わかりやすい解説
古代プロイセン語 (こだいプロイセンご)
Old Prussian
古代プロシア語ともいい,また単にプロイセン語(プロシア語)ともいわれる。バルト語派に属する一言語。この語派の東のグループを形成するリトアニア語とラトビア語が現存しているのに,西のグループを形成していたいくつかの言語は18世紀に滅んだこのプロイセン語を最後に完全に消滅したので古代プロイセン語といわれる。この言語が話されていたのは東部プロイセンで,13世紀にドイツ騎士団がこの地を征服して以来ゲルマン化が進み,後にプロイセンはドイツの地と考えられるようになるが,元来はプロイセン語を話すプロイセン人を含む西バルト人の地である。
古代プロイセン語の資料は16世紀の3編のルター派の問答集と二つの語彙集があるだけで,後者の一つは15世紀初頭のものであるとはいえ,表記や翻訳の方法が不適当で価値が低く,言語の全体像はあまり明白ではない。この言語はバルト語派中でもっとも古い特徴が多く残されており,リトアニア語やラトビア語とかなり異なり,これがバルト語派に東西二つのグループを認める一つの理由である。名詞には中性名詞もあり七つの変化のタイプ,五つの格をもつが,双数はない。全体のタイプは明らかに屈折的である。
執筆者:千野 栄一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報