合金工具鋼(読み)ごうきんこうぐこう(その他表記)alloy tool steel

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「合金工具鋼」の意味・わかりやすい解説

合金工具鋼
ごうきんこうぐこう
alloy tool steel

炭素鋼にニッケル Ni,クロム Cr,モリブデン Mo,タングステンW,バナジウムVなどを加えた特殊工具鋼。すべてキルド鋼 (→鋼塊 ) または電気炉で製造した高級鋼材で製造され,十分な自由鍛造または圧延により調質して用いる。基本となる炭素鋼は炭素 C0.7~2.2%の高炭素鋼が多いが,粘靭性を要するものには C0.12~0.45%の低炭素で Ni,Cr,Moなどを加えたものもある。種類は多いが用途により次のように分けられる。 (1) 中空鋼 高炭素または中炭素低合金鋼で,削岩機用ロッド,ビットに用いられる。 (2) 切削用 すべて C0.8%以上の高炭素低合金鋼で,バイト,ドリル,のこぎり,やすりなど。 (3) 耐衝撃用  C0.35~1.10%の低合金鋼で,たがね,ポンチ,削岩機用ピストンなど。 (4) 冷間金型用  C0.90~2.20%の高炭素でだいたい低合金鋼であるが Cr10%のものも数種あり,冷間抜型,ねじ切りダイス,線引きダイスなど。 (5) 熱間金型用 (a) C0.25~0.42%と (b) C0.5~0.8%の2系統がある。 (a) は Cr,Wをやや多く含む合金鋼でプレス型,ダイカスト型,押出しダイスに,(b) は低合金鋼で自由鍛造用ダイブロック,プレス型に用いられる。 (6) 高速度鋼 すべて高炭素で,2系統あり,いずれも高速重切削用である。これらの合金工具鋼の性能を十分に出すには正確な熱処理が必要で,各鋼種について JISで示されている。

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