高速度鋼(読み)コウソクドコウ(その他表記)high speed steel

デジタル大辞泉 「高速度鋼」の意味・読み・例文・類語

こうそくど‐こう〔カウソクドカウ〕【高速度鋼】

タングステンコバルトクロムバナジウムモリブデンなどを加えた切削用の工具鋼旧来工具鋼より高速度で切削できる。ハイスピードスチールハイス

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精選版 日本国語大辞典 「高速度鋼」の意味・読み・例文・類語

こうそくど‐こうカウソクドカウ【高速度鋼】

  1. 〘 名詞 〙 バイトダイスドリルなど、金属材料切削工具に用いられる特殊鋼。鉄に、タングステン・コバルト・クロム・バナジウム・炭素マンガン・モリブデンなどの合金元素を加えたもの。摂氏一二〇〇~一三〇〇度で焼入れをし、さらに五八〇度付近で焼戻して、硬度耐熱性を大きくする。〔訂正増補新らしい言葉の字引(1919)〕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「高速度鋼」の意味・わかりやすい解説

高速度鋼
こうそくどこう
high speed steel

金属を高速度で切削加工する工具の材料に使われる合金工具鋼で,俗称ハイス。炭素工具鋼は高速切削すると摩擦熱で焼きが戻り軟化する欠点があるので,アメリカ人 R.マシェットがこの鋼種の原形を開発 (1858) し,以来改良されて今日のものとなり,炭素工具鋼の4~7倍の高速切削ができる。基本となる高炭素鋼 (炭素 0.7~1.6%) に,クロム Cr (3.8~4.5%) ,バナジウム (1~5%) のほかに,タングステンW (17~22%) を含む高タングステン系と,モリブデン Mo (4.5~6.2%) ,W (5.5~11.0%) のW-Mo系とがあり,いずれにも低コバルト (0~4%) と高コバルト (5~15%) とがある。高タングステン系は一般切削用,W-Mo系は特に靭性を必要とする切削用で,いずれも高コバルトのものは高硬度難削材用である。原料を電気炉で溶製し,鋼塊は鍛錬比6以上に鍛圧する。熱処理は鋼種によって異なるが,およそ 800~900℃焼鈍後徐冷,1300℃付近に再加熱して焼入れ,560~600℃で焼戻す。焼入れ組織は均質なオーステナイト地に硬いマルテンサイトが出ているが,これを焼戻すと,Fe,Cr,Wなどの複炭化物が析出し,オーステナイトが冷却中マルテンサイトとなるので大きく硬化する (高速度鋼の二次硬化という) 。あらかじめ高温焼戻しをして硬化しているので刃先が赤熱しても軟化しない。高価なのでバイトなどは高炭素鋼アームの先端に小片を硬鑞 (こうろう) で接着して用いる。

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百科事典マイペディア 「高速度鋼」の意味・わかりやすい解説

高速度鋼【こうそくどこう】

ハイスピードスチール,略してハイスとも。金属を高速度で切削できる強力な工具鋼。米国のF.テーラーとM.ホワイトがタングステンを含む鋼の新しい熱処理法を発明,高温でも軟化しないバイトを作り,切削法に革命的変革を招来。その後コバルト添加などの改良がなされた。今日ではタングステン18%,クロム4%,バナジウム1%のものを基本とし,コバルト2〜16%を加えた重切削用,タングステンの一部をモリブデンで置き換えたものなどがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「高速度鋼」の意味・わかりやすい解説

高速度鋼
こうそくどこう
high speed steel

工具鋼の一種で、鉄鋼その他の材料を高速度で切削しても刃先が軟化せず、切れ味を保つ切削用鋼という意味で名づけられた鋼。1900年アメリカのテーラーF. V. TaylerとホワイトM. Whiteにより、クロムとタングステンとを多量に添加した鋼を1200℃以上の高温から焼き入れたときにこの性質が得られることが発見された。高速度鋼の代表的な組成は18・4・1、すなわちタングステン18%、クロム4%、バナジウム1%、および約0.7%の炭素である。タングステンの一部または全部を重量で約2分の1のモリブデンによって置換しても類似の性質が得られ、これをモリブデン高速度鋼という。コバルトを添加すると高温強度がより向上する。切削工具のみでなく、多くの耐摩耗部品に用いられる。

[須藤 一]

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改訂新版 世界大百科事典 「高速度鋼」の意味・わかりやすい解説

高速度鋼 (こうそくどこう)

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世界大百科事典(旧版)内の高速度鋼の言及

【工具鋼】より

…これらの工具鋼は耐摩耗性に優れ,衝撃にも耐えるように調質することができるので,単に切削工具材料とされるのみではなく,ブロックゲージなどのゲージ類,ぜんまい,ペン先などにも活用される。
[高速度鋼]
 俗にハイスともいわれ,金属材料の高速切削用にイギリスで開発された鋼である。開発当初,炭素1.5~2%,タングステン7~8%を含み,これにマンガン1~2%が添加されていた。…

※「高速度鋼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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