名人長二(読み)めいじんちょうじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「名人長二」の意味・わかりやすい解説

名人長二
めいじんちょうじ

人情噺(ばなし)。三遊亭円朝がモーパッサンの小説『親殺し』を翻案・作話したといわれる。1894年(明治27)暮れより『中央新聞』に連載して評判になった。指物(さしもの)師の長二は、優れた腕と名人気質(かたぎ)で知られていた。あるとき長二は、自分が捨て子であり、それを亡き長左衛門夫婦が育ててくれたことを知り、谷中(やなか)の天竜院で養父母法事を営む。そのとき知り合った亀甲(きっこう)屋幸兵衛・お柳夫婦のひいきを受けるが、やがてこの幸兵衛夫婦が実の親であることを知り、話がもつれて争いのすえ、2人を殺してしまう。南町奉行(ぶぎょう)筒井和泉守(いずみのかみ)は、長二を助命しようと苦心するうち、長二の実父はお柳の前の夫であり、お柳と幸兵衛が密通していたことが判明する。幕府の重臣林大学頭(だいがくのかみ)が、長二の殺人は実父の仇討(あだうち)をしたことになると判定して長二は許される。長二は和泉守の腰元島路と結婚し、亀甲屋半之助と名のる。推理小説風の名作である。

[関山和夫]

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