四元素説(読み)しげんそせつ(その他表記)theory of four elements

日本大百科全書(ニッポニカ) 「四元素説」の意味・わかりやすい解説

四元素説
しげんそせつ
theory of four elements

真に「有るもの」は不生不滅・不変不動であるというパルメニデス一元論に対し、変化のある感覚世界に立脚して紀元前5世紀に古代ギリシアのエンペドクレスが唱えた。イオニアの哲学者たちの根本物質(火・空気・水)に土を加えた四つの根(こん)(元素)は、伝統的な「対立物」としての熱・冷、湿・乾をパルメニデスの「有るもの」として実在化したもので、もう二つの根「愛」「憎」の力によって結合、解離し、万物の諸変化が生じるとした。この説はアリストテレスによって採用され、18世紀末にラボアジエが近代的元素説を提出するまで、七元素説などを派生しながら、基本的な物質観として受け継がれた。しかし、アリストテレスにあっては、真の元素は四元素を形づくる熱・冷・乾・湿の「形相」であり、この形相の変化により元素転換もおこるとされ、健全な唯物論観念論に変えられ、錬金術の理論的基礎ともなった。

[肱岡義人]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の四元素説の言及

【元素】より

…さらに前5世紀初め,ヘラクレイトスは万物がたえず運動し変化してとどまることがないことから,変化こそ自然の姿であり,万物流転を示す火が唯一の根本成分であると唱えた。同世紀の中ごろエンペドクレスは,上述の4種の一元論を統合して,土,水,空気,火を万有の基本とする四元素説を唱え,この四元素説は長く人心を支配した。柴田雄次の現代的解釈によれば,風,水,土はそれぞれ物質の気,液,固の3相を表し,火はエネルギーに対応する。…

※「四元素説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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