日本大百科全書(ニッポニカ) 「パルメニデス」の意味・わかりやすい解説
パルメニデス
ぱるめにです
Parmenidēs
(前515ころ―前445ころ)
古代ギリシアの哲学者。南イタリアの町エレアに生まれる。エレア学派の始祖。富裕な名門の出身で、町の指導者の一人であったらしく、エレア市民のために法律を制定したとも伝えられる。叙事詩の韻律である六脚韻を駆使して『ペリ・フュセオース』(自然について)を書きつづったが、いまは断片が残されているのみである。この著作は、序詩、第一部、第二部といった三部からなっている。序詩は、若いパルメニデスが日の神の娘たちの駆る馬車に乗り、暗い臆見(おくけん)の世界を去って明るい真理の世界へたどり着き、女神から真理と臆見について啓示を受ける、といった寓話(ぐうわ)的な舞台を設定する。第一部は、啓示された真理を歌い、「在るもの」(ト・エオン)があり「在らぬもの」(ト・メー・エオン)はないという前提から、不生不滅、不可分、不変不動であって、完結した丸い球に似ている、といった「在るもの」の属性を引き出し、「在るもの」をわれわれに示す理性のみが真理をとらえ、「多」や生成や消滅や変化を信じさせる感覚は誤謬(ごびゅう)の源であると説く。第二部は、誤謬に満ちた臆見を歌い、感覚の世界は「在るもの」(光)と「在らぬもの」(闇(やみ))という二つの「形体」(デマス)を併置し、両者からあらゆるものを合成するところに生じると説く。こうした思索が当時の思想界に与えた影響は計り知れない。
[鈴木幹也 2015年1月20日]
『藤沢令夫訳『パルメニデス』(『世界文学大系63 ギリシア思想家集』所収・1965・筑摩書房)』