イオニア(読み)いおにあ(英語表記)Ionia

翻訳|Ionia

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イオニア」の意味・わかりやすい解説

イオニア
Iōnia

アナトリア(小アジア)西岸中央部とその周辺の諸島をさす古代ギリシアの地方名。前1200年以前からヒッタイト王国と接触,ギリシア人からはアシアス(アジア)と呼ばれた。おそらくアカイア王国の崩壊でアッチカ方面からイオニア系ギリシア人が東遷,その名を地名として残した。前8世紀からエフェソスミレトスキオスサモスなど 12主要都市が興り,宗教的な汎イオニア連盟が成立し,オリエントとの交流で学芸が栄えた。前700年以降,黒海からスペイン沿海地方に植民し,そのためリュディアと争い制圧され,次いでアケメネス朝ペルシアの支配下に入った。前499年頃反乱して失敗したが,これがペルシア戦争の原因となった。前5世紀にはアテネスパルタに服し,前387年ペルシアに提供された。アレクサンドロス3世治下では名目上独立を保ったが,前2世紀ローマの属州アシアとなり,ビザンチン帝国治下でも,エフェソス,ミレトス,スミルナ,キオスなどは世界的都市として繁栄した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イオニア」の意味・わかりやすい解説

イオニア
いおにあ
Ionia

古代ギリシアの地域名で、小アジア西岸の南北約150キロメートルに及ぶ帯状の地域。紀元前1000年ごろにアテナイ(アテネ)を中心とするイオニア系のギリシア人により植民が行われ、前8世紀後半にはミレトス、キオス、サモスなどのポリスが形成された。同じころ、この地においてホメロスの二大叙事詩がまとめられている。この後ギリシア世界の先進地域として発展し、植民市建設にも積極的に参加した。前600年ごろにはミレトスのタレスにより哲学が創始された。前6世紀に入ると、リディア、のちペルシアの支配を受け、前5世紀初めには反乱を起こすが失敗した。これがペルシア戦争の発端である。この後解放されたイオニア諸市の大半はデロス同盟に加わった。前386年には、名目的ではあるがふたたびペルシア支配下に置かれ、アレクサンドロス大王の東征後はマケドニア、のちにペルガモンの領土に編入され、前133年にローマの属州とされた。

[前沢伸行]

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