日本大百科全書(ニッポニカ) 「国家征服説」の意味・わかりやすい解説
国家征服説
こっかせいふくせつ
conquest theory 英語
Eroberungs theorie ドイツ語
強い種族が弱い種族を征服することによって国家が生じたと説く国家起源論の一つ。広義にはソフィストやマキャベッリによって説かれた実力説と同視されることもあるが、普通は19世紀末にオーストリア学派が主張した社会学上の理論をさす。征服説は、未開種族の実証的研究を基礎にダーウィニズム的観点から、戦闘的な狩猟種族が平和的な農耕種族を打ち負かして支配者となったのち、この支配関係を維持すべく、また征服によって得た大土地と奴隷とを保持すべく法秩序が形成され、国家が生まれたと説く。グンプロビッチ、ラッツェンホーファー、オッペンハイマーが代表的論者として知られている。征服説は、マルクス主義の立場から、階級闘争を種族の征服本能に起因させる点などを批判されたばかりか、アメリカの人類学者ローウィによって、いっそう実証性を高めた研究に基づく批判を向けられているが、根本的な否定には至らず、今日でもなお有力な見解にとどまっている。
[佐々木髙雄]