大学事典 「国民団」の解説
国民団[羅]
こくみんだん
中世大学において,学生ないし教師と学生が相互扶助や自衛を目的として形成した団体。ラテン語natioは英語nationなどの語源となったが,それは国民という近代的な意味は持っておらず,同一言語を話す地域出身者といった意味である。元来コンソルティアなどと呼ばれた私的な互助団体が,ほぼ出身地域を同じくし共通の言語を話す学生などで形成される法人団体となったもので,独自の規約と役職者をもったが,教育そのものには関与しなかった。
やがて学生たちは,それぞれの国民団から代表者を選出し,それらの代表者によって運営される大学団(universitas)を組織した。13世紀前半のボローニャ大学(イタリア)には,アルプス以北大学団にフランス人,スペイン人,イギリス人,ノルマン人,ドイツ人など13の国民団,アルプス以南大学団にはローマ人,カンパーニア人,トスカナ人,ロンバルディア人の四つの国民団が存在した。同時期のパリ大学(フランス)には,教養諸学の教師と学生によるフランス,ノルマンディー,ピカルディー,イギリスの四つの国民団があった。
著者: 児玉善仁
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報