日本大百科全書(ニッポニカ) 「国民皆兵制」の意味・わかりやすい解説
国民皆兵制
こくみんかいへいせい
近代国家形成期の18世紀末にフランスで成立した制度。フランス革命の発端となった1789年7月のバスチーユ襲撃の直前に組織された民兵がその後、国民軍garde nationaleとよばれるようになった。1790年に国民軍は義務制となり、さらに1793年の国民総徴集法によってすべてのフランス国民が常時軍務に徴集されることになった。こうして成立した国民皆兵の思想に基づく国民軍は、それまでの国内治安維持の任務から離れ、志願兵制の正規軍とともにもっぱら外敵と戦うこととなった。すなわち、国民国家の形成に伴い、国王の傭兵(ようへい)ではなく、一般市民が国家のために戦うという新たな状況が生まれた。国民皆兵制はナポレオン遠征の影響でヨーロッパ各国で採用されるようになり、日本でも1873年(明治6)の徴兵令で一定の年齢の男子に兵役義務を課す国民皆兵制が導入されたが、国民に近代的国民国家の一員たる市民意識が乏しいこともあって、真の国民皆兵制を確立するには至らなかった。
[亀野邁夫]