民兵(読み)ミンペイ(その他表記)militia

翻訳|militia

デジタル大辞泉 「民兵」の意味・読み・例文・類語

みん‐ぺい【民兵】

民間人で編制した軍隊。また、その兵。

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精選版 日本国語大辞典 「民兵」の意味・読み・例文・類語

みん‐ぺい【民兵】

  1. 〘 名詞 〙 民間人で編成した軍隊。また、その兵。
    1. [初出の実例]「古者用来目物部之兵、而参以民兵」(出典:新論(1825)国体中)
    2. 「民兵や浮浪兵の離散するものも多かった」(出典:夜明け前(1932‐35)〈島崎藤村〉第一部)
    3. [その他の文献]〔玉海‐兵制四・慶暦兵録〕

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改訂新版 世界大百科事典 「民兵」の意味・わかりやすい解説

民兵 (みんぺい)
militia

常時在営して軍務に服するのではなく,日常は家業その他一般職業に従事し,有事に際しては緊急に動員されて編成される武装集団または兵士をいう。したがって,平時は産業労働力として経済活動に活用され,有事には人口に比し多数の武装力が迅速に造成できるほか,愛国心など国民的な精神基盤の強化が図られるとともに国家の財政的負担が軽減できる等の長所がある。反面,民兵制度は兵器操作の熟練度など高い戦闘能力の維持が困難で,奇襲侵攻に対する即応性に欠け,軍隊としての団結,規律の維持に限界があり,戦闘力発揮において常備軍には及ばない。とくに現代戦においては兵器装備の精密化に伴い専門的技術や高い練度が求められ,戦場の広域化,戦況推移の迅速化などへの対応が求められてきており,民兵制度の問題点は多くなってきている。民兵は国際法上,正規の軍隊と同様に交戦資格が認められ,捕虜も陸戦法規に基づく待遇が与えられることになっている。

 現代の民兵には,国民皆兵,義務兵役制を前提とし,平時は教育基幹要員以外は常備軍を設けないもののほか,常備軍と併設されるものがある。歴史的には,民兵制は最も初源的な軍隊制度であり,古代ギリシア都市国家などの古代の兵役制度として,また革命に際して,あるいは革命後の旧軍隊崩壊時の兵役制度として登場している。なお,地方の保安のため民間で組織した民兵隊posse comitatusもイギリス,アメリカなどに存在した。

 現在,常備軍をほとんどもたない典型的な民兵制を採っているのはスイスだけであり,20~50歳までの男子が年齢に応じて毎年所定の訓練を受け,制服,小銃,弾薬などをそれぞれ家庭に保管しており,1981年現在,有事には48時間以内に約60万人の動員が可能といわれている。中国をはじめスウェーデン,朝鮮民主主義人民共和国,大韓民国アルゼンチンなどの国も民兵制度を有するが,いずれも常備軍と併設の形態を採っている。アメリカの州兵も民兵の一形態で,1981年現在,州兵陸軍36万人,州兵空軍9万人が予備戦力として訓練されている。ソ連は当初常備軍と民兵を併設していたが,1939年民兵を廃止している。日本は明治維新後,常備軍を建軍維持し民兵制を採ってはいないが,北海道屯田兵は民兵制の一種ともいえよう。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「民兵」の意味・わかりやすい解説

民兵
みんぺい
militia

常備軍が一般に常時兵営に起居して、一定年数にわたって軍事訓練に専念するのに対し、定期的に短期間の訓練は受けはするが、平時には家にあって職につき、緊急時には動員されて、主として地域防衛の任にあたる市民の軍事組織を民兵とよぶ。

 民兵の起源は、自由民が軍務に服する義務をもっていた古代のギリシア・ローマにまでさかのぼれる。この民兵制はやがて傭兵(ようへい)や常備軍によって代替され、中世には民兵はほとんど消滅した。近代ヨーロッパでは、イギリスが長く市民軍の伝統を守り、フランスも革命期に民兵制度を採用したが、19世紀に入るとしだいに義務兵役制にとってかわられるか、正規軍の予備的な役割を果たすだけになる。民兵を重視したアメリカも同様である。革命後のソ連では、人民の軍隊としての民兵が軍隊の基本となるべきか否かについて激しい論争があったが、正規軍派が最終的に勝利した(旧ソ連で「民兵(ミリツイア)」の名でよばれたのは民警である)。一方、イスラエル、中国、キューバなどの国々は、いまでも民兵を補助的な軍隊としてもっており、また、永世中立国スイスは常備軍をもたず、国土防衛を民兵的組織にゆだねている。

 民兵制度は国家財政への負担が軽く、国民的な組織としてけっして軽視はできないが、軍事技術進歩に訓練面で迅速に適応できず、攻勢型の機動戦にも向かない。また、市民生活とつねに接触しているため、よほど国論が一致していない限り、政治的な不和や対立を軍事組織内に持ち込む可能性が強くあり、為政者や正規軍は深刻な事態に一時的に民兵制を採用することがあっても、その恒久化にはだいたいにおいて反対してきた。

[山崎 馨]

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百科事典マイペディア 「民兵」の意味・わかりやすい解説

民兵【みんぺい】

平時は一般の職業に従事している民衆が,戦時に武装して軍隊を構成する制度,またその兵員をいう。常備兵と対比される。志願によるものと義務的なものとがある。軍隊としての熟練度は落ちるが経費が少なくてすみ,兵士の自発性に期待できる。米国のミリシア制,スイスやキューバの兵制がこれにあたる。→常備軍徴兵制兵役
→関連項目州兵人民公社正規軍戦闘員

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「民兵」の意味・わかりやすい解説

民兵
みんぺい
militia

常時在営の常備兵に対して,平時はそれぞれの職業に従事しながら定期的に軍事訓練を受け,有事の際召集されて部隊を形成する兵のこと。古代ギリシア・ローマ時代から民兵は存在し,軍の主力となっていた。戦闘の技術や団体精神などでは常備軍に劣るが,常備軍を多数かかえるよりは財政的に安価ですみ,一般産業の労働力とも両立できるという有利さをもっている。第1次世界大戦以前はまだ武器の操作が簡単で,戦争の勝敗は動員可能の兵力数で決るとされており,民兵制は有力であった。その後兵器の進歩や戦争様式の変化もあって,20世紀に入ると,各国は常備軍の強化に傾いた。しかし民兵はゲリラ戦あるいは人民戦争では主役をになうもので,現在では,スイスを例外とすれば,中国,ベトナム,キューバなどの社会主義国で採用されている。国際法上,民兵は,責任ある指揮官のもとに隊を構成し,識別できる特殊な標識をつけ,公然と武器をたずさえて交戦法規に従って戦う場合に,交戦資格を認められ,捕えられた場合に捕虜の待遇を受ける。

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普及版 字通 「民兵」の読み・字形・画数・意味

【民兵】みんぺい

郷兵。

字通「民」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の民兵の言及

【アメリカ合衆国】より

…公民権運動をはじめ,消費者運動,環境保護運動,モラル・マジョリティ,キリスト教右派などの保守的な道徳化運動,これらの影響力は現代アメリカの政治を理解するのに無視することはできない。【斎藤 眞】
【軍事】

[民兵と常備軍]
 アメリカ合衆国防衛についての基本精神は,イギリスより継受した自由主義の伝統,開拓社会としての労働人口の不足,人口の拡散した広大な空間などの要因を背景に,少なくとも歴史的には常備軍に対する民兵の優位を中心にしていた。つまり,植民地時代,常時存在していたインディアンや外来者の脅威に対して,防衛専門の集団を別置するだけの人的資源がなかったアメリカ社会では,人々は自らの手で各家庭を,各共同体を防衛せざるをえなかったのである。…

※「民兵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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