改訂新版 世界大百科事典 「在来マス」の意味・わかりやすい解説
在来マス (ざいらいます)
日本古来から生存していたサケ・マス類の総称。輸入種であるニジマスその他が全国に普及するにつれ,それに対比させて生まれたことば。日本におけるマス類の養殖の始まりは,1877年アメリカのカリフォルニア州シャスタのニジマス卵を東京に輸入してからで,第2次世界大戦後,冷凍技術が確立してアメリカへ輸出するようになって急速に日本各地に養殖場が開設され生産量が増大した。ニジマスは,比較的高い水温(孵化(ふか)18℃,飼育25℃)でも耐えること,採卵・飼育が容易なことから,従来から山奥の冷水域に分布していたヤマメ,アマゴ,イワメ,ヒメマス,イワナ,アメマス,オショロコマ,ゴギなどの生息域に侵入していった。その後,これらの日本古来のサケ・マス類について見直しが叫ばれ,各地で養殖が試みられるようになった。ちなみに,おもな輸入種にはニジマスのほかに,カワマス(1901,日光),ブラウントラウト(昭和初期ニジマス卵に混入),スチールヘッド(明治末)などがある。
執筆者:松下 克己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報