日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニジマス」の意味・わかりやすい解説
ニジマス
にじます / 虹鱒
rainbow trout
[学] Salmo gairdneri
硬骨魚綱サケ目サケ科に属する魚。体表のとくに背面、背びれ、尾びれに細小の黒斑(こくはん)が散在し、背部は緑褐色、腹部は銀白色で、側線部の帯状の淡紅色の輝きは虹(にじ)のイメージを与え、英名はレインボウトラウト。幼魚の外観とくに小判形のパーマークはヤマメとよく似る。アラスカからメキシコに至る北アメリカ西岸の河川に広く分布し、北方域のものは降海・遡河(そか)型のスチールヘッドトラウトsteelhead troutが主となる。地域による系統群、亜種がかなり多く、分類上の問題の余地が多く、本来、単一の魚種とみなしがたいが、頻繁な移殖の結果、系統群の特性は乱れているため、現在学名は標記の一つで示されることが多い。低温の渓流や湖沼に生息するが、ほかのサケ・マス類よりはやや高い温度に耐える。通常、体長55センチメートルに達するが、さらに大きくなるものがある。一般に3年目に成熟し、10月から翌年3月が産卵期で、数年連続して成熟する。水生昆虫や小形魚を食い、貪食(どんしょく)で、サケ・マス類の稚魚の害魚とされる。約100年前から世界各地に移殖されてよく定着し、河川・湖沼放流、池中養殖の適種となっている。日本には1877年(明治10)以来数回にわたり、おもにカリフォルニア州の渓流のものおよびスチールヘッド系のものが移入された。現在、北海道西別(にしべつ)川、摩周湖などで自然繁殖している。河川内の野生のものは習性が荒いため釣りの対象として喜ばれる。
[久保達郎]
料理
味が淡泊なので各種の料理に向く。洗い、刺身など生食のほか、小形のものは姿のまま塩焼き、魚田(ぎょでん)、から揚げ、甘露煮(かんろに)、ムニエルに、また、切り身にしたものはてんぷら、酒蒸しなどにも利用できる。外国でのニジマス料理はフライやバター焼きが多いが、フランスやスイスではニジマスのオー・ブルーが代表的料理として知られている。これは、ニジマスを青く輝くようにゆで上げた料理で、生きたニジマスだけがもつ、体表のぬめりのある薄い膜を酢を使って青く変色させたものである。
[河野友美]
釣り
養殖されたニジマスは、湖や、川の中流部から上流部に放流されて釣りの対象魚になる。山間の渓流の一部を仕切り、ここに魚を放流して釣らせるのが常設釣り場である。
餌(えさ)釣り、ルアー釣り、フライフィッシングで楽しめる。餌釣りは先調子の渓流竿(ざお)で、玉ウキ1個のウキ釣りか、道糸に目印をつけたミャク釣り。餌はイクラが主体で、ブドウムシやヤナギムシ。また、釣り場により養魚用飼料を主にした練り餌でも釣れる。ルアーは、スピナー、スプーンが主体で、とくに流れのある渓流では小型の軽いスピナーがよい。フライフィッシングは3~6番のロッドとラインを使い、ドライやウェットフライでねらうとよい。
[松田年雄]