垂乳(読み)たらちし

精選版 日本国語大辞典 「垂乳」の意味・読み・例文・類語

たらちし【垂乳】

  1. 「母」および「吉備(きび)」にかかる。語義、かかりかた未詳。「たらちねの」と同系の語。
    1. [初出の実例]「多良知志(タラチシ) 吉備の鉄(まがね)の さ鍬(ぐは)持ち 田打つなす 手打て子ら 吾は舞ひせむ」(出典播磨風土記(715頃)美嚢・歌謡)
    2. 「みどり子の 若子(みづこ)が身には 垂乳為(たらちし) 母に懐(むだ)かえ」(出典:万葉集(8C後)一六・三七九一)

垂乳の補助注記

「吉備」にかかる例は、満ち足りたの意で、本来ほめことばかとする説もある。


たらち【垂乳】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] ( 「たらちね」または「たらちし」の変化したもの ) 母親。また、両親
    1. [初出の実例]「谷の木の実をあさるとて、たらちの猿の子を引連れて」(出典:浄瑠璃・今川了俊(1687)道行)
  3. [ 二 ] ( 「たらちの」の形で ) 「親」にかかる枕詞のように使う。
    1. [初出の実例]「たらちの親のみ心に、背きまつりて悩むまで、深くも罪はつくらじを」(出典:無弦弓(1901)〈河井酔茗〉春風怨)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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