改訂新版 世界大百科事典 「基本列」の意味・わかりやすい解説
基本列 (きほんれつ)
fundamental sequence
m,nが限りなく大きくなるとき,|am-an|が0に限りなく近づいていく数列{an}を基本列,またはコーシー列という。収束する数列は基本列である。{ai},{bi}がともに基本列であるとき,{ai+bi},{ai-bi},{aibi}はいずれも基本列になる。また,{bi}が0に収束せず,すべてのbiが0でないならば,{ai/bi}も基本列になる。実数の基本列はつねに極限値をもつ。この性質を実数の完備性という。有理数の基本列{ai},{bi}が同じ極限値(実数)をもつとき,{ai}と{bi}は同値であるということにすると,これは一つの同値関係であり,同値類の間に加減乗除を定義することができる。有理数の基本列は有理数の範囲では極限をもつとは限らないが,有理数の基本列の類がその極限の実数を定めるという観点から,G.カントルは実数の構成を行った。
執筆者:杉江 徹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報