極限(読み)キョクゲン

デジタル大辞泉 「極限」の意味・読み・例文・類語

きょく‐げん【極限】

物事限度ぎりぎりのところ。「体力極限に達する」
数列番号を限りなく大きくするとき、または関数変数の値をある値に近づけるか正・負の無限大にするときに、数列や関数値が限りなく近づく一定の値。極限値
[類語]限度限界リミット限り最大限手一杯目一杯頭打ち際限きわ上限下限北限ぎりぎり

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精選版 日本国語大辞典 「極限」の意味・読み・例文・類語

きょく‐げん【極限】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( ━する ) 極めてせまい範囲に限定すること。
    1. [初出の実例]「人間の技倆は機械の働きの如く、世の進歩と逆比例に段々極限されて行かねばならぬ」(出典:女工哀史(1925)〈細井和喜蔵〉二)
  3. 物事の限度ぎりぎりの所。
    1. [初出の実例]「恋とは夢だ。…『夢』とは全き放心だ。その正しい極限では一切が虚無となる」(出典:なよたけ(1946)〈加藤道夫〉第一幕)
  4. きょくげんち(極限値)〔物理学術語和英仏独対訳字書(1888)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「極限」の意味・わかりやすい解説

極限
きょくげん

数列a1, a2,……, an,……において、添数のnが限りなく大きくなるとき、anの値がある値Aに限りなく近づくならば、anはAに収束するといい、Aをこの数列の極限値limit valueといって、

と書く。また、nを大きくするとき、anが限りなく大きくなるならば、anは正の無限大に発散するといい、

と書く。nを大きくするとき、anが負でその絶対値が限りなく大きくなるならば、anは負の無限大に発散するといい、

と書く。anがある極限値に収束する場合、あるいは正または負の無限大に発散するとき、極限があるといい、そうでないとき、極限がないという。数列の極限はこのように、数列においてnが限りなく大きくなるとき、anがどのようになるかを考えるための概念的な用語である。

[竹之内脩]

関数の極限

関数f(x)はx=aの近くで定義されているとする(x=aでは定義されていなくてもかまわない)。このときxが限りなくaに近づくときf(x)の値がどのようになっていくかが極限の問題である。

(1) f(x)はある定まった値bに限りなく近づく。このとき、f(x)はbに収束するといい、bを、xがaに近づいたときのf(x)の極限値といって、

と書く(の(1))。

(2) f(x)はいかなる値をも超えて大きくなっていく。このときf(x)は正の無限大に発散するといって、

と書く(の(2))。f(x)が負の値をとって、その絶対値が限りなく大きくなるとき、f(x)は負の無限大に発散するという。以上が極限のある場合である。次に極限のない場合を考える。

(3) f(x)は有界(関数の値が、ある数を超えず、また、ある数より小さくならないとき、その関数を有界であるという)であるが極限のない場合(の(3))。

(4) f(x)は有界でなく極限のない場合(の(4))。

 なお極限のない場合、aの片側だけをみると極限のある場合もある(の(5)・(6))。左側から近づいたときの極限値があるとき、これを左側極限値といい、

で表す。同様に、右側極限値

が定められる。

[竹之内脩]


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改訂新版 世界大百科事典 「極限」の意味・わかりやすい解説

極限 (きょくげん)
limit

数列を考えると,この数列の第n項は,nが限りなく大きくなるにつれて0に限りなく近づく。一般に一つの無限数列ann=1,2,……}の第nanが,nを限りなく大きくするときある一定の数Aに限りなく近づくとき,この数列は収束するといい,Aをこの数列の極限値と呼ぶ。記号で,で表す。例えば数列は収束し,極限値はそれぞれ0,1である。収束しない数列を発散数列と呼ぶ。それらのうち

(1)1,2,22,23,……,2nのように,nが大きくなるに従って第nanが限りなく大きくなるとき,この数列は正の無限大に発散するといい,とかく。

(2)同様にの場合が定義される。

(3)その他の場合,その数列は振動すると呼ばれることがある。実数列が収束するために必要十分な条件は,それが基本列をなすことである。
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百科事典マイペディア 「極限」の意味・わかりやすい解説

極限【きょくげん】

収束

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