改訂新版 世界大百科事典 「塗覆装」の意味・わかりやすい解説
塗覆装 (とふくそう)
金属材料の防食法の一種で,環境と材料との絶縁を目的とした方法。防食塗装が通常5~7年,重防食塗装で15年程度の寿命であるのに対し,20年以上の防食効果をもたせるために,通常はあらかじめ製膜してある有機質被覆材料のシートやメンブレン(皮膜)をライニング加工する。防食対象となるのは地中埋設パイプライン,石油貯蔵用タンク,海洋構造物(とくに腐食の激しい飛沫帯や干満帯が対象となる),建材の外装などである。シート材料としてはナイロン,エポキシ樹脂,塩化ビニル樹脂,フッ素樹脂,塩素化ポリエーテル,天然ゴム,ネオプレン,フッ素ゴムなどが用いられる。あらかじめ製膜されていない材料としては,古くはアスファルトエナメル,コールタールピッチなどが用いられた。近年はペトロラタム系の防食材を防食テープで施工する技術も使われる。樹脂材料の場合は金属の溶射と同じように溶射が行われるようになってきた。また合成樹脂にケイ砂などの骨材を配合したレジンモルタルなどが5~10mmの厚さで施工されることもある。モルタル用レジン材料には,耐酸性として不飽和ポリエステル樹脂,耐アルカリ性としてアミン硬化エポキシ樹脂,耐溶剤用としてエポキシアクリレート系樹脂などがある。
執筆者:増子 昇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報