化学辞典 第2版 「塩化硫化窒素」の解説
塩化硫化窒素
エンカリュウカチッソ
nitrogen chloride sulfide
硫化窒素(鎖状，またはヘテロ環状)の骨格をもち，そのS原子にCl原子が共有結合したものや，SN環が陽イオンとなって Cl－ とイオン結合している．【Ⅰ】共有結合Cl原子をもつ例：三塩化三硫化三窒素(trinitrogen trichloride trisulfide，1,3,5-trichloro-cyclo-1,3,5,2,4,6-trithiatriazine)；N3Cl3S3(244.58)．N4S4のCCl4溶液に Cl2 を作用させると得られる．黄色の単斜晶系針状結晶．図(a)のようなほぼ平面の六員環分子に，3個のCl原子が結合している．環のπ電子はある程度非局在である．乾いた空気中では安定である．急熱すると爆発する．有機溶媒に可溶．[CAS 5964-00-1]【Ⅱ】イオン結晶の例：塩化四硫化三窒素(trinitrogen chloride tetrasulfide，cyclo-1,2,4,6,3,5,7-tetrathiatriazinium choride)；N3ClS4(205.74)．CS2中でN4S4とS2Cl2とを反応させると得られる．図(b)のようなN3S4＋と Cl－ がイオン結合している．非極性溶媒に不溶．空気中で加熱すると爆発する．アルカリ水溶液では加水分解して，NH3，亜硫酸，チオ硫酸になる．[CAS 12015-30-4]【Ⅲ】共有結合，イオン結合の両形式の結合Clをもつ例：二塩化三硫化二窒素(dinitrogen dichloride trisulfide，1-chloro-cyclo-1,2,4,3,5-trithiadiazinium chloride)；N2Cl2S3(195.12)．S2CL2とN4S4またはNH4Clとを反応させると得られる．赤褐色の単斜晶系結晶．図(c)に示すCl枝がついたいくらかひずんだ五員環 [S3N2Cl]＋ と，Cl－ がイオン結合している．[CAS 35338-10-4]
出典 森北出版「化学辞典（第2版）」化学辞典 第2版について 情報