共有結合(読み)キョウユウケツゴウ(その他表記)covalent bond

デジタル大辞泉 「共有結合」の意味・読み・例文・類語

きょうゆう‐けつごう〔キヨウイウケツガフ〕【共有結合】

化学結合の一。二つ原子が一つ以上の電子を共有することによって生じる結合。ふつう、二つの電子が電子対を作り、これが共有される。

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精選版 日本国語大辞典 「共有結合」の意味・読み・例文・類語

きょうゆう‐けつごうキョウイウケツガフ【共有結合】

  1. 〘 名詞 〙 化学結合の一つ。二個の原子から出された電子を両原子が共有して結合する方式。電子対結合。等極結合。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「共有結合」の意味・わかりやすい解説

共有結合
きょうゆうけつごう
covalent bond

二つの原子が、電子対(逆向きのスピンをもつ1組2個の電子)を共有することによって生ずる化学結合をいう。電子対結合ともいう。また、イオン結合異極結合というのに対し、等極結合ということもある。そのほか2電子ではなく、1電子あるいは3電子が共有されるような場合をも含めていうことがある。

 化学結合はすべて電子が原因となって生成するわけであるが、形式的にいえば、結合する2原子が互いに1個ずつの電子を出し合って電子対をつくり、これが完全に一方に移ってしまうのがイオン結合であり、二つの原子のちょうど中間にあるのが共有結合であるといえる。イオン結合や共有結合の理論的取扱いには、このような両極端の状態を考えるが、実際の化合物中での化学結合では、そのような極端ではなくむしろそれらの間にあってどちらかに偏っているとしたほうがよい場合が多い。したがって共有結合的要素の強い化学結合を単に共有結合といっている。

 また共有される電子対が、形式的に二つの原子から供給されたものではなく、一方の原子からのみ供給されたものであるとき、その共有結合を配位結合半極性結合)といって区別している。

[中原勝儼]

『藤谷正一・木野邑恭三・石原武司著『化学結合の見方・考え方』(1987・オーム社)』『関崎正夫著『わかりやすい物理化学』(1988・共立出版)』『山内淳・平山鋭・谷口仁・東長雄著『物理化学の基礎』(1989・朝倉書店)』『ジェームズ・E・ブラディ、G・E・ヒューミストン著、若山信行・一國雅巳・大島泰郎訳『ブラディ 一般化学』上(1991・東京化学同人)』『山本嘉則編著『有機化学 基礎の基礎――100のコンセプト』(1997・化学同人)』『米山正信著『化学のドレミファ2 イオンのことがわかるまで』(1997・黎明書房)』『川端潤著『ビギナーズ有機化学』(2000・化学同人)』『一國雅巳著『基礎無機化学』改訂版(2008・裳華房)』

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改訂新版 世界大百科事典 「共有結合」の意味・わかりやすい解説

共有結合 (きょうゆうけつごう)
covalent bond

電子対結合ともいう。化学結合の代表的な様式の一つで,原子と原子の間に形式的に最外殻の電子が1~3組の電子対をつくっているとみなされ,しかもその電子がどちらの原子に所属するともいえず,むしろ両原子に(さらに分子内の他の原子にまで)共有されているとみなされる結合。電子が両原子に均等に共有されていれば,等極結合または無極性結合とも称する。しかし,共有結合も,もう一つの代表的な結合であるイオン結合も,極限的な結合様式として頭の中で考えているもので,実在の結合は両者の中間の性格をもっている。とくに異種の原子間の結合では,電子対の電子密度分布は電気陰性度の大きい原子のほうに偏っている。なお電子対の数によって単結合二重結合三重結合と区別することがある。記号としては通常実線で表すが点表示を用いることもある。たとえば塩化水素HCl,エチレンC2H4の場合は,次のように表記する。

 共有結合は大部分の有機化合物の結合様式であるが,無機化合物にも例は多く,

ダイヤモンドシリコングラファイト等も典型的な共有結合の例である。なお,共有結合については量子論に基づく分子軌道法によって理論的な裏づけがなされているが,これによると内殻電子分子軌道をつくり,対をなしていることになる。最初に形式的に最外殻の電子と記したのは,歴史的な理由によって内殻電子のこのような寄与を除外して考えることを意味している。また分子化合物の電荷移動型の結合も共有結合の概念を用いて説明されている。
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百科事典マイペディア 「共有結合」の意味・わかりやすい解説

共有結合【きょうゆうけつごう】

化学結合の一種。二つの原子の間でお互いに電子を共有することによって安定となり,生ずる結合をいう。通常二つの原子間にスピン反対の二つの電子が対をつくって共有されるので,電子対結合ともいわれる。たとえばメタンCH4,塩化水素HClなどにみられるそれぞれの原子間の結合がこれで,CH4ではCを中心にして正四面体の各頂点にHが存在するような方向性をもった四つの共有結合が存在する。ただし一般には完全な共有結合はきわめて少なく,異種原子間では多少ともイオン結合性が含まれている。二つの原子間で電子対が二つ以上共有される場合もあり,二重結合三重結合などと呼ばれる。電子対によって安定な共有結合ができる機構は一般に量子力学によって説明される。
→関連項目水素結合正孔配位結合

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化学辞典 第2版 「共有結合」の解説

共有結合
キョウユウケツゴウ
covalent bond

水素分子のように,2個の原子が2個の電子を共有することによって形成される結合をいう.結合を線で表すことがあるが,電子対による結合であることを表す意味で,電子を点で表し,H:H,Cl:Clのような電子点式で示すこともある.同じ原子からなる二原子分子の結合では,電子の偏りがないから,この結合を等極結合とよぶことがある.これに対して,H:Clのように異なる原子間に形成される結合では,電子の偏りが生じ,結合にイオン性が現れる.このような結合は異極結合とよばれ,イオン結合と等極結合との混成として表される.電子対による結合が安定になることは,量子力学的な効果によるもので,電子の交換にもとづく交換エネルギーが主要な原因になっている.

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「共有結合」の意味・わかりやすい解説

共有結合
きょうゆうけつごう
covalent bond

電子対結合,等極結合,無極結合ともいう。2個の原子がスピンの逆向きの2個の電子を共有することによって形成される結合という意味合い。電子対によって安定な化学結合を生じる機構は H.ハイトラー,F.ロンドンによる水素分子の量子力学的な取扱いによって初めて明らかにされた (1927) 。すなわち結合のための安定化エネルギーは,主として2個の電子の交換に伴うエネルギーに起因している。水素分子では水素原子は2個の電子を共有してヘリウム型の電子構造をとっている。結合に関与する電子対を:で表わして,単結合H-HやC=HをH:H,C:H,二重結合C=OやC=CをC::O,C::Cのように表わすことがある。

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栄養・生化学辞典 「共有結合」の解説

共有結合

 2個の原子が2個の電子を共有することによる結合.

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世界大百科事典(旧版)内の共有結合の言及

【化学結合】より

この表記法は現在でもしばしば用いられ,ルイスの点表示と呼ばれる。I.ラングミュアはこのような考え方を八隅説,また結合を共有結合と呼んだ(1919)。ルイスの考え方の重要な点は,化学結合は原子と原子を結びつけている電子対であることを指摘したことにある。…

※「共有結合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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