…黒表紙の次に作られた国定教科書(緑表紙)では,〈数理思想の開発〉の名のもとに暗算は強化され,769+76といった3位数+2位数まで暗算でやるようになり,さらに次の教科書(水色表紙)では,250-24-68-75というものまでが暗算に入れられた。 第2次世界大戦後もしばらくこの傾向は続いたが,50年代の終りに,暗算と筆算に関して数学教育上有名な論争が数学者の遠山啓(1909‐79)と塩野直道(1898‐1969)の間で行われた。緑表紙の編集責任者であった塩野は,暗算には日常生活における実用的価値と数概念に基づいた計算を意識的に使うことにより数学的思考を絶えず働かすという理論的価値があり,暗算を計算の中心に位させるという暗算中心の計算体系を主張したのに対して,遠山は,暗算には個人差が多く,筆算は安易さからもその形式のもつ発展性からも計算の中心であり,これを早くから指導すべきであるという筆算中心の計算体系を主張した。…
※「塩野直道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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