パーソナリティー障害のなかでは最も多くみられるもので、米国では精神科外来患者の20%、入院患者の10%程度を占めるといわれています。日本においても、精神科入院患者の5~10%を占めます。日本では、最近この分野の権威である牛島らにより厚生労働省研究班の治療ガイドラインが策定され、積極的な取り組みを行う治療施設もみられます。
症状の特徴は、親しい者から見捨てられることを避けようとして行う衝動的行動と、理想化とこき下ろしといわれる、対人関係での不安定で衝動的な言動です。また、付随した症候として、慢性的
この障害の大切な側面は、他のさまざまな障害と併存しやすいことです。うつ病や摂食障害、アルコール・薬物の依存症などにしばしば認められます。最近では、発達障害のひとつのADHD(注意欠如多動性障害)との関連性も指摘されています。職場や学校でこうした人がいると周囲の人はその人に気を使い、いつも感情的に張りつめた状態になることから、このことをやめることを形容して“Stop Walking on eggshells”(邦題『はれものにさわるような毎日をすごしている方々へ』)というタイトルの患者さんへの対処法の本が米国で以前好評となり、和訳されました。
患者さんは情緒的に反応しやすいため、通常の精神療法的接近が困難な場合が少なくありません。そこで今日までさまざまな治療方法が試みられてきました。そのなかで最も今日世界的に用いられているのは弁証法的行動療法(DBT)でしょう。
これは、認知行動療法と禅の思想を融合させたというユニークな治療方法です。行動療法、個人精神療法、電話相談、薬物療法を多角的に組み合わせて患者さんの自殺や自傷行為を減らし、生活の質を改善しながら、次第に病態の安定化を求めようとするもので、その効果が研究により確認されている数少ない治療方法のひとつです。
この治療方法の姿に象徴されるように、この障害は何かひとつの治療方法で対応できるものではなく、さまざまな方法を組み合わせて対応していくべきものでしょう。最近の話題としては、薬物療法では最近開発された非定型抗精神病薬が有効であるとの報告が増えています。
こうした病態への接近は、まず患者さんの作り出す世界に巻き込まれず、一定の心理的距離を保つこと、患者さんの行為の是非を問うのでなく、何がその行為を導いているのかをゆっくり求めていくという姿勢が大切でしょう。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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