改訂新版 世界大百科事典 「夏のカノン」の意味・わかりやすい解説
夏のカノン (なつのカノン)
Sumer-canon
原名《Sumer is icumen in(夏は来りぬ)》。1250年ころ(1310年説もある)イギリスのレディング修道院で成立したとされるロータrotaと呼ばれるタイプのカノン(レディングのロータReading Rotaともいう)。声部数は6声部で,上の4声部と下の2声部(ペスpes)がそれぞれに別のカノンを形づくる二重カノンの形態をとり,明るく美しい響きと精巧な構造のために,しばしば〈音楽史の奇跡〉といわれる。歌声は,上の4声部が逐次〈入り〉を行いながら,〈夏が来た。大きな声でカッコウが歌う……〉と歌い進み,下の2声部は最初から〈カッコウが歌う。さあ,カッコウが歌う〉と繰り返す。6線ネウマ譜による手書き譜(ラテン語による詳しい演奏上の指示を含む)は大英博物館に保存されている。
執筆者:服部 幸三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報