夏のカノン(読み)なつのカノン(その他表記)Sumer-canon

改訂新版 世界大百科事典 「夏のカノン」の意味・わかりやすい解説

夏のカノン (なつのカノン)
Sumer-canon

原名《Sumer is icumen in(夏は来りぬ)》。1250年ころ(1310年説もある)イギリスレディング修道院で成立したとされるロータrotaと呼ばれるタイプのカノン(レディングのロータReading Rotaともいう)。声部数は6声部で,上の4声部と下の2声部(ペスpes)がそれぞれに別のカノンを形づくる二重カノンの形態をとり,明るく美しい響きと精巧な構造のために,しばしば〈音楽史の奇跡〉といわれる。歌声は,上の4声部が逐次〈入り〉を行いながら,〈夏が来た。大きな声でカッコウが歌う……〉と歌い進み,下の2声部は最初から〈カッコウが歌う。さあ,カッコウが歌う〉と繰り返す。6線ネウマ譜による手書き譜(ラテン語による詳しい演奏上の指示を含む)は大英博物館に保存されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の夏のカノンの言及

【イタリア音楽】より

…ダンテのあとを受けたペトラルカやボッカッチョの時代の14世紀に,初めは北イタリアのベローナやミラノの宮廷で,やがてはフィレンツェを中心に,マドリガーレ,バラータ,カッチャなどの形式による世俗歌曲が,多くは2~3声で,盛んに作られた。マドリガーレはイタリア独自の形式,バラータは,おそらく13世紀のラウダに現れたものから発展し,同時代のフランスのビルレーの影響を色濃く受けたもの,カッチャは,西ヨーロッパにかなり広がっていたカノンの技法を発展させたものである(《夏のカノン》)。 盲目の音楽家ランディーニFrancesco Landiniは,14世紀のイタリア音楽を代表する。…

※「夏のカノン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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