多賀信仰(読み)たがしんこう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「多賀信仰」の意味・わかりやすい解説

多賀信仰
たがしんこう

滋賀県犬上(いぬかみ)郡多賀町に鎮座の多賀大社を中心とした信仰。延命長寿(えんみょうちょうじゅ)祈願を主体とする。多賀大社に対して延命長寿を祈願した起源は不詳であるが、文献上の古いものとして『多賀大社儀軌(ぎき)』に、中世初頭、重源(ちょうげん)が東大寺再建完遂のため長寿を得ようと伊勢(いせ)の神宮に祈願したところ、「汝(なんじ)寿命を祈るならば、近江(おうみ)の多賀神に申請うべし」と託宣があったと記されている。このころより、延命長寿祈願を主とした信仰は一般に広く広がったものとみられ、また伊勢・熊野の御師(おし)と同様の役割をもって、当社坊人(ぼうにん)(下級の社僧)が神札、供物(くもつ)、杓子(しゃくし)、延命酒、かつお節(ぶし)、錫(しゃく)などをもち、各地を回るようになってその信仰者範囲はさらに広がり固定した。1588年(天正16)豊臣(とよとみ)秀吉が生母大政所(おおまんどころ)の病気回復、延命を当社に祈願寄進したことは有名だが、近世にも「多賀は命神(いのちがみ)」との信仰は根強く庶民の間に伝わり、近代より現代にも多賀講は大きく組織されてきている。

[鎌田純一]

『多賀大社編・刊『多賀神社史』(1933)』


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