多賀集落のほぼ中央に位置し、祭神は
〈近江・若狭・越前寺院神社大事典〉
鎌倉時代中期頃には「犬上東西郡鎮守」となっており、郡内の御家人層が四月祭礼の祭使役(近世以後は一ノ頭・侍頭・御使殿とも称した)を勤仕し、郷民が馬上役(近世以後は二ノ頭・百姓頭・馬頭人とも)を勤めるのが先例となっていた(文永六年一〇月七日「六波羅下知状」多賀大社文書、以下集合文書名のないものはすべて同文書)。当社の宮座として「神官兼御家人」の多賀氏一族を中心とする「氏座」と、他の御家人・荘官らの地縁的な人々を座衆とする「郡座」があった(正元元年一一月一七日北条時茂書状)。これは近江国の宮座の初見でもある。当時は多賀氏一族の氏神的要素を残し、氏座側が優位な立場にあったため、郡座内の御家人・荘官らとの対立もしばしばみられた。文永六年(一二六九)の前掲下知状によれば、建長年間(一二四九―五六)には郡座側の
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
滋賀県犬上(いぬかみ)郡多賀町に鎮座。祭神は伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)、伊邪那美(いざなみの)大神の二柱。『古事記』に「伊邪那岐の大神は淡海(あふみ)の多賀に坐(ま)します」とあるのがもっとも古い記録であるが、『延喜式(えんぎしき)』には「多何神社二座」とある。766年(天平神護2)に神封六戸が寄せられたのを初めとして、古来朝廷から武家、民衆に至るまで広く厚い崇敬を集め、とくに延寿の神としての信仰が盛んである。「お伊勢(いせ)参らばお多賀へ参れ、お伊勢お多賀の子でござる」とか「伊勢にゃ七度熊野へ三度、お多賀さまへは月参り」と俗謡に歌われ、「お多賀さん」と親しまれた。多賀講の歴史も古い。旧官幣大社。1947年(昭和22)に社号を多賀神社から多賀大社と改めた。
4月22日の古例大祭は「多賀まつり」とよばれ、鎌倉時代以来の伝統に基づく豪華絢爛(けんらん)の祭り絵巻を繰り広げる。また節分祭(2月節分日)、御田植祭(6月第2日曜日)、万灯祭(8月3~5日)、莚寿(えんじゅ)祭(8月20日~9月15日)その他、年中行事も多彩である。
所蔵文化財には、国指定重要文化財の調馬厩馬図屏風(ちょうばきゅうばずびょうぶ)、県文化財の三十六歌仙絵屏風などのほか、1333年(元弘3・正慶2)の五辻宮(いつつじのみや)の朝敵誅伐(ちゅうばつ)成就の御寄進状、武田信玄(しんげん)の娘安産の祈願文、豊臣(とよとみ)秀吉の母病気平癒の祈願文など文書に珍重すべきものも多い。境内には安土(あづち)桃山時代築造の書院庭園(国指定名勝)や、重源(ちょうげん)が東大寺再建を志し延命を祈願したときのゆかりの石「寿命石」がある。元正(げんしょう)天皇の御病気平癒を祈りその吉瑞(きちずい)に始まるという「お多賀杓子(しゃくし)」は名物である。
[谷 省吾]
『多賀神社社務所編『多賀神社史』(1933・大岡山書店)』▽『多賀大社叢書編集委員会編・刊『多賀大社叢書』(1977~)』
滋賀県犬上郡多賀町に鎮座。伊邪那岐(いざなき)命,伊邪那美命をまつる。《古事記》に〈伊邪那岐大神は,淡海(近江)の多賀に坐すなり〉とある古社。《新抄格勅符抄》に,766年(天平神護2)神封6戸,摂社山田神社へ5戸,同日向神社へ2戸とあり,延喜の制で小社であるが,いつしか延命長寿の神として信仰され,鎌倉時代に犬上郡の総鎮守とされるとともに,神主が御家人として幕府の保護もうけた。元弘の変では亀山上皇の皇子守良親王より賊徒平定祈願をうけ,室町時代社僧の活躍とともに,〈お伊勢参らばお多賀へ参れ,お伊勢お多賀の子でござる〉〈お伊勢七度(ななたび),熊野へ三度,お多賀さまへは月参り〉といわれるほどの衆庶の信仰をあつめ,戦国武将の多くも寄進したが,豊臣秀吉は生母の病気平癒祈願のあと,その礼として米1万石を奉納,徳川幕府も朱印領350石を寄進,彦根藩主井伊氏も147石余の黒印領を寄せた。社殿は1638年(寛永15)幕府の命による造営が完成したが,安永,天明の2度の火災にあい,1805年(文化2)仮造営のあと,1932年再建。しかし,奥書院,庭園等文化財を残している。旧官幣大社。例祭4月22日,多賀まつりのこの日の祭礼は,馬頭人の祭礼とよばれ,鎌倉時代を再現しての豪華なもの。ほかに8月3日よりの万灯祭,中世よりの伝統をもつ多賀講の講社祭が9月28日にある。
執筆者:鎌田 純一
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