杓子(読み)しゃくし

  • ×杓子

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

飯またはなどをすくう台所用具。シャモジともいい,古くはカイヘラと呼ばれた。形は丸い頭に柄をつけたもので,一般に用は頭が平らであるが,汁用は中くぼみになっている。木,竹,貝製のほか,金属やほうろう製のものもある。食物配分の道具として重要なため,古くから主婦権の象徴,五穀豊穣の呪物とされている。

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デジタル大辞泉の解説

飯を盛ったり汁などをすくったりする道具。頭が丸く中くぼみの皿形で柄がついている。形・材質などから、木じゃくし・玉じゃくしなどという。一般に飯用のものは杓文字(しゃもじ)という。
杓子形(がた)」の略。
飯盛り女。旅人相手の私娼。
「みやげにもならぬ―を旅で買ひ」〈柳多留・四二〉

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百科事典マイペディアの解説

飯や汁をすくう具。飯杓子を特に〈へら〉ともいう。〈しゃもじ〉は女房詞(ことば)。貝子,木杓子,お玉杓子などがある。杓子は食物を配分することから主婦権の象徴とされ,主婦を〈へら取り〉,主婦権譲渡を〈へら渡し〉などという。また杓子は山神祭の採物(とりもの)ともされたため主婦のことを山の神ともいう。厳島神社,滋賀県多賀大社などではお守りとして売る。
→関連項目へら渡し

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食器・調理器具がわかる辞典の解説

汁をすくったり、飯を盛ったりするのに用いる道具。汁用はすくう部分が丸い小皿の形で長い柄の付いたもの、飯用は先が丸く平らなへら状のものだが、飯用は普通「しゃもじ」という。⇒しゃもじ

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

汁や飯などをすくうための用具。女房詞(ことば)では「しゃもじ」という。杓子の最初は貝殻の自然のくぼみを利用していたようで、正倉院にこの貝杓子がある。また縦割りのヒョウタンや、木をくりぬいたものも古くから用いられた。杓子は古くはカイとかヘラとよばれていた。ヘラはおもに飯杓子をさしていたと考えられ、飯(いい)ガイとよばれていた記述もある。カイは汁・飯両用のようで、現在も、九州地方ではカイ、東日本ではヘラという呼び名の残っている所もある。杓子は、汁用、飯用ではすくう対象が違うため、当然その形態も異なる。汁杓子は汁をすくうためのくぼみが必要だが、飯杓子は不要である。したがって、初めはくぼみがあった飯杓子も、しだいに平らな木のヘラ状に変わったようだ。ヘラという呼び名もこのあたりから出たとみてよい。一方、汁杓子は貝や木彫り製であったのが、金属製や、さらに加工したほうろう製のものもできた。また形も、玉杓子のほか、穴杓子、網杓子など用途別のものが種々現れた。

 杓子は食物配分の道具として使用された。そのため、その権限を握る主婦権の象徴として古くから大きな意味をもち、たとえば、東北地方では主婦を「へらとり」といい、主婦権の譲渡を「へらわたし」「杓子わたし」「杓子を譲る」などという。また杓子は、各地の名所、とくに、神社で名物として売られているが、杓子は穀物と関係し、福をよぶ呪物(じゅぶつ)と考えられているためである。

[河野友美]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙
① 汁や飯などをすくうのに用いる具。頭は、汁用が小皿形、飯用は平板形。古くは木製や貝製のものを用いた。主婦が家族の飯を杓子で盛り分けることから、主婦権を象徴し、また、富籤(とみくじ)など勝負事に勝つまじないの具にもされた。飯匙(いいがい)。しゃもじ。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「ヲヤヲヤ、おしゃもじとは杓子(シャクシ)の事でございますよ」
② 実(み)のいらないいが栗。杓子栗(しゃくしぐり)。また、①の頭のように、まるくて中のくぼんだ形をいう。
※俳諧・類船集(1676)之「いがぐりの中に実のいらぬをしゃくしといへり」
※評判記・嶋原集(1655)「金作 かほ大略なり。但しゃくしなり」
⑤ (①は飯を盛るのに用いるところから) 飯盛り女。旅人相手の私娼。
※雑俳・川傍柳(1780‐83)二「本ぬりの酌子(シャクシ)はみせの影で売」
⑥ 「しゃくしかけ(杓子掛)②」の略。
※歌舞伎・油商人廓話(1803)序幕「それそれ、阿波座の杓子(シャクシ)か、横堀の鼻の落ちた和郎が似合ひ相応ぢゃ」
⑦ 馬鹿、阿呆(あほう)をいう、江戸時代天保~嘉永(一八三〇‐五四)頃の流行語。
※随筆・皇都午睡(1850)三「ゑらい杓子じゃは、至って新物也。以前の南京じゃなアと同意なるべし」
⑧ 和船の船尾戸立の別称。近世前期日本海海運の代表的廻船であった北国船における特殊な呼称。上部を水返しという。
※田名部海辺諸湊御定目(1781)諸湊地他着船御役付「北国船〈略〉長は向ふしとみ之内端より艫(とも)のしゃくしの端揃内端まて」

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