改訂新版 世界大百科事典 「大レトラ」の意味・わかりやすい解説
大レトラ (だいレトラ)
スパルタの伝説的な立法者リュクルゴスが,デルフォイからもたらした神託といわれ,スパルタの国制の大綱を規定したもの。プルタルコスの《リュクルゴス伝》第6章に伝えられており,第13章に記されている三つのレトラを今日〈小レトラ〉と呼ぶのに対して,〈大レトラ〉と称される。〈レトラrhētra〉は〈契約,法律〉の意。〈大レトラ〉の中で,神殿建立,2王,長老会,民会について述べた部分は,前800年ころ,リュクルゴスが貴族政ポリスを成立させたときに定められ,部族とオーバōba(スパルタ人の地域的区分)に関する部分は,前750年後まもなく,アミュクライのスパルタ併合時に付加され,さらに前8世紀後半の第1次メッセニア戦争中に,長老会の優越性を再確認する〈追加条項〉が別に加えられ,以上の全体がデルフォイの神託によって裁可された,と解することができる。ただしこれを,前7世紀後半の民主的な改革の大要を示したものと見る考えもある。
執筆者:清永 昭次
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