大学事典 「大学財政と寄付税制」の解説
大学財政と寄付税制
だいがくざいせいときふぜいせい
大学設置者に寄付した個人や法人は,納税額の軽減を受けられる。従前は,学校法人よりも国立大学に寄付した場合のほうが税制上の優遇内容が充実しているなどの制度的な課題があったが,逐次改善されてきている。近年では2011年(平成23)の税制改正で,特定公益増進法人の証明を受けている学校法人のうち一定条件を満たす学校法人に寄付した個人は,従来からの所得控除に加えて税額控除を受けることが可能となった(文部科学省,2014)。この制度設計は「新しい公共」という考え方に基づき,草の根的な寄付を促進するものである。私立大学からみれば,寄付金収入を増やし,財源の多様化に活用できる制度だといえる。ただし,寄付税制の充実は少なくとも短期的には税収の減少を意味しており,行政サービスの水準の低下を招く可能性がある。この税収減を社会的なインフラを整備するための共通経費(酒井克彦「わたしたちの社会参画と税制」『税大ジャーナル』,2013年)として捉えれば,大学に係る寄付税制の充実の目的は,大学教育の費用は私的に負担するのが当然だという根強い認識の相対化にあるとも考えられる。
著者: 日下田岳史
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報