朝日日本歴史人物事典 「大林芳五郎」の解説
大林芳五郎
生年:元治1.9.14(1864.10.14)
明治期の実業家。大林組の創業者。塩・肥料商の徳七の子。はじめ呉服商を営むが,のち土木建築工事請負業者の下で修業,大阪鉄道などの工事に従事。明治25(1892)年独立し大林組創立。北浜銀行頭取の岩下清周 と相識り親交を深め,建設業の近代化に尽力。42年大林組を合資会社に改組,相談役就任。岩下の勧めで阪急,近鉄など十数社に大株主として関係し,大阪瓦斯社長の片岡直輝らと広島瓦斯,広島,阪堺両電気軌道を創立するなど,関西財界で岩下,片岡らと有力グループを形成した。手がけた代表的な工事には東京駅(1914年完成)を始め,伏見桃山御陵,近鉄の生駒トンネル,阪急などの私鉄がある。近鉄創立時,当初の生駒山をケーブルで越える原案を排し,トンネルによる大阪と奈良の直結を主張し自ら工事を請け負った。予期せぬ難工事の連続で近鉄が立ち往生し,両社のメーンバンクの北浜銀行が取り付けにあった際,大林は恩人岩下の救済に私財を潔く提供した。<参考文献>白田喜八郎『大林芳五郎伝』,故岩下清周君伝記編纂会『岩下清周伝』
(小川功)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報