日本大百科全書(ニッポニカ) 「大陸打通作戦」の意味・わかりやすい解説
大陸打通作戦
たいりくだつうさくせん
太平洋戦争末期に、日本陸軍が中国戦線で実行した最大規模の進攻作戦。正式には一号作戦と名付け、大陸打通作戦は通称で、大陸縦断作戦とも呼んだ。作戦の目的は、(1)中国奥地の米空軍基地を攻略して、B29爆撃機による本土空襲を防ぐこと、(2)海上交通が不安となったので、中国大陸を縦断して南方に至る交通線を確保すること、(3)中国軍の武力を破砕して国民政府に打撃を与えること、などであったが、最終的には(1)の空軍基地攻略に限定された。16個師団に上る大兵力を使用した作戦は、1944年(昭和19)4月から翌年1月にかけて第1期の京漢作戦(けいかんさくせん)、第2期の湘桂作戦(しょうけいさくせん)で、華北から仏領インドシナまでの長大な地域を連絡し、桂林、柳州、遂川(すいせん)などの航空基地を占領した。しかしB29はすでにマリアナ基地に移って、日本全土に対する空襲が始まっており、大軍を動かしたことの戦略的意義はすでに失われていた。補給が困難だったので日本軍に大量の病死者が生じた。
[藤原 彰]
『防衛庁防衛研修所戦史室編『一号作戦 1~3』(『戦史叢書 4・16・30』1967~1969・朝雲新聞社)』