改訂新版 世界大百科事典 「天川節」の意味・わかりやすい解説
天川節 (あまかわぶし)
琉球王府時代にできた古典音楽の曲名,または古典女七踊の一つ。古典音楽では〈天川の池に遊ぶ鴛鴦(おしどり)の 思羽(おもいば)の契り与所(よそ)は知らぬ〉〈天川の池や千尋(せんひろ)も立ちゆん 此(う)れよかも深く思て給(たぼ)れ〉という2首の琉歌を三味線にのせてうたう。歌意は〈天川の池に遊ぶ鴛鴦のように,愛し合って2人が契りを交わしたことをまだだれも知らない。天川の池の深さは千尋もあると聞いているが,それよりも深く私を愛して下さい〉という内容である。軽快なリズムと旋律のよさも相まってよく演奏される曲である。古典女踊ではこの天川節を本踊にし,ちらしに仲順(ちゆんじゆん)節を使う。女性による一人踊で,琉髪に紅型(びんがた)衣装の打掛を着たういういしい娘姿で小道具などを持たずに踊る。乙女が人知れず恋の成就を喜ぶという主題である。この歌や踊の背景には牽牛(けんぎゆう)・織女にまつわる天の川伝説が投影しているようである。
執筆者:宜保 栄治郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報