わし座の主星アルタイル中国名、またはその擬人化で、牛郎(ぎゅうろう)ともいう。和名の彦星(ひこぼし)または犬飼星(いぬかいぼし)にあたる。こと座のベガと天の川を挟んで向かい合い、アルタイルはウシを飼う若者の牽牛に、ベガは機(はた)を織る乙女の織女(しょくじょ)にそれぞれなぞらえられた。中国の説話によると、織女はもともと天帝の娘で、明けても暮れても機織りに精を出していたが、天帝は、彼女が1人きりでなんの楽しみもないのを哀れみ、牽牛と結婚させた。ところが織女は結婚したとたん仕事をほうり出してしまったので、怒った天帝は2人を別居させた。それ以後2人は天の川の両岸に離れ離れに暮らすようになり、1年に一度だけ会うことが許されたという。
この物語は、現在も中国の民間に広く流布している。2人が会うことが許されるのは7月7日といわれ、この牽牛と織女の伝説は、七夕(たなばた)行事とともに日本にも伝播(でんぱ)した。
[桐本東太]
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[日本での歴史]
日本のアサガオは,奈良朝の末期に遣唐使の一行によって中国から渡来したとか,朝鮮の百済(くだら)から持ち込まれたとかいわれるが,定説はない。中国ではアサガオを牽牛(けんご),種子を牽牛子(けんごし)といっている。薬用の種子は黒と白色のもので,利尿,殺虫をかねた峻下剤として,下半身の水腫,尿閉症の妙薬として珍重されたようである。…
…和名は彦星。中国名牽牛(けんぎゆう)を当時の男子の敬称によって呼んだものである。また,犬飼星の別称もあり,七夕説話伝来以前の和名かと思われる。…
…中国,神話伝説の中にみえる男女一対の神。おそらく元来は牽牛が男の仕事である農耕を,織女が女の仕事である養蚕紡織を象徴し,神話的宇宙観の中で二元構造をなす一対の神格であったものが,星座にも反映されたものであろう。星名は,牽牛がアルタイルAltair,織女がベガVega。…
…7月7日を特別の祭日とする観念は,おそらく古い農耕儀礼に起源をもつのであろうが,文献資料にのこるものとしては後漢時代の崔寔(さいしよく)《四民月令》が最も古いものの一つである。そこには,この日に書物の虫干しをするほか,河鼓(かこ)(牽牛)と織女の二星が会合するのにあわせて,人々は願いごとをするという(牽牛・織女)。虫干しにされるのは衣服だともされ,衣服に祖霊が依り付くという古くからの信仰と考えあわせ,7月7日が元来,農耕儀礼に結びついた祖霊祭の日であったことが推定される。…
※「牽牛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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