日本大百科全書(ニッポニカ) 「娘娘廟」の意味・わかりやすい解説
娘娘廟
にゃんにゃんびょう
道教の、女神を祀(まつ)る廟。娘とは母または少女のこと、娘娘は皇后をいい、女神の通称である。泰山(たいざん)娘娘を祀る碧霞元君(へきかげんくん)宮がその代表的なものである。碧霞元君は泰山東岳(とうがく)大帝の女(むすめ)で、玉女とされる。泰山には死者の魂が集まり、人の生命をつかさどるというが、娘娘に中国民衆の生の欲求にこたえる性格の強いのはそのためであろうか。北京(ペキン)郊外の五頂のほかに、金頂妙峰山の娘娘廟が北京の民衆の信仰を集めた。遼寧(りょうねい)省大石橋の娘娘祭も有名である。娘娘の名称には、送生(そうせい)、催生(さいせい)、註生(ちゅうせい)、送子(そうし)、子孫などがあり、子授けと安産の神とされるが、眼光娘娘には眼病平癒を、斑疹(はんしん)(天花)娘娘には天然痘除(よ)けの願いが込められる。また西王母(せいおうぼ)をいう王母娘娘、媽祖(まそ)をいう天后娘娘などがある。娘娘は観音(かんのん)、薬王、斗母(とぼ)とも比せられる。
[原田正己]