泰山(読み)タイザン(英語表記)Tài shān

デジタル大辞泉 「泰山」の意味・読み・例文・類語

たい‐ざん【泰山/岱山/太山】

中国、山東省中部にある名山。標高1524メートル。中国五岳の一。古来信仰の対象となり、秦・漢時代から皇帝が封禅ほうぜんの儀式を行った所。玉皇廟など古跡が多い。1987年、世界遺産複合遺産)に登録された。岱宗。タイシャン
高く大きな山。

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精選版 日本国語大辞典 「泰山」の意味・読み・例文・類語

たい‐ざん【泰山・岱山・太山】

  1. ( 「たいさん」とも )
  2. [ 1 ]
    1. [ 一 ] 中国、山東省の泰安県の北にある山。中国五岳の一つ。秦・漢時代から皇帝が封禅(ほうぜん)の儀式を行なった所で、玉皇祠などの名勝古跡に富む。東岳。タイシャン。
      1. [初出の実例]「泰山阿中。桂葉蒙霜而猶緑」(出典:本朝文粋(1060頃)三・弁山水〈大江澄明〉)
      2. [その他の文献]〔晉書‐孫恵伝〕
    2. [ 二 ]たいさんぶくん(泰山府君)[ 一 ][ 一 ]」の略。
      1. [初出の実例]「其の王をば趙の武の霊王と云ふ。今、此の国をば惣(す)べて、大山の控摂し給ふ事を受て」(出典:今昔物語集(1120頃か)九)
  3. [ 2 ] 〘 名詞 〙
    1. ( [ 一 ]から転じて ) 高く大きな山。大山。また、大山のように立派な様子。
      1. [初出の実例]「無始生死の間に塵の結縁積て泰山となり、露の功徳たまりて蒼海とたたへて」(出典:海道記(1223頃)極楽西方に非ず)
    2. 妻の父をいう。唐の玄宗のとき、泰山[ 一 ][ 一 ]での封禅の際に、張説の女婿である鄭鎰(ていいつ)が説の力で昇進したのを、泰山の力によると言った故事に基づく。〔布令字弁(1868‐72)〕

泰山の補助注記

五岳の一つの「泰山」と、大きな山の意の「大山」とが、意味を重ね合わせて用いられることが多い。

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改訂新版 世界大百科事典 「泰山」の意味・わかりやすい解説

泰山 (たいざん)
Tài shān

中国,山東省の山岳,またそれにつらなる山地。魯山・沂山(ぎざん),蒙山の山地とあわせて山東中部の山地を構成する。なかでも泰山が最も高く,主峰の天柱峰(玉皇頂)は標高1545m。山麓地帯は安定した自然をもち,大汶口(だいぶんこう)文化,竜山文化などの新石器時代遺跡も多く分布する。平坦な華北平原の東にそびえ立つため古くから注目され,五岳うちの東岳として岱宗(たいそう)(五岳の首峰)とも呼ばれた。《詩経》閟宮(ひきゆう)に〈泰山巌巌,魯邦所詹(けわしくそびえる泰山は,魯の国から行くところ)〉とあるように,多くの古典にも記されている。伝説の聖人や孔子,孟子も登ったり,中原諸侯の会盟が行われるなど,古代華北文化の象徴的存在であり,北麓には斉,南麓には魯の国が繁栄した。天子の行う最高の儀式とされる封禅(天地の祭り)は泰山で行うものとされ,秦の始皇帝が始めて実行した。以後,漢の武帝,後漢の光武帝・章帝,唐の高宗・玄宗,宋の真宗,清の康煕帝などがこれに倣った。同時に山上山下に堂廟が建てられ,露岩には題字が刻されるなど,文人墨客の訪れる名勝の地となっていった。これらの訪問者の残した詩詞の類も数えきれない。その奇景と文化財があいまって天然の歴史博物館となっており,現在も有数の観光地である。山下の天貺殿(てんきようでん)は宋代に建てられた宮殿式建築であり,それより山頂に至るまで紅門宮,万仙楼,壺天閣,普照寺,中天門などの名勝がある。
泰山刻石 →泰山府君
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世界遺産詳解 「泰山」の解説

たいざん【泰山】

1987年に登録された中国の世界遺産(複合遺産)。山東省中部、魯中山地の西端部を占める、標高1533mの玉皇頂を主峰とする山岳、及びそれに連なる山脈で、周長約80kmが登録範囲になっている。華北平原からは、その雄大な山容を望むことができる。泰山は「東岳」、「岱(たい)山」または「岱宗」ともいい、漢の時代には「泰山府君」という尊称で呼ばれた。また、道教の聖地で、5つの山「五岳」(泰山、衡山、恒山、嵩山、華山)の筆頭とされて信仰を集めた。道教では、泰山は「東岳天斉大生仁聖帝」(東岳大帝)という神である。また、俗説では、泰山は人間の生死、寿命、官位、死後の審判を司るとされ、生前の罪を処断し、罪を犯した者は地底の獄に送り懲罰するという、仏教の閻魔大王とよく似た冥府(死後の世界)の神と信じられてきた。さらに、秦の始皇帝が泰山で封禅(ほうぜん)の儀式を行って以来、泰山で行う封禅の儀式は皇帝の資格を得た者の最高の儀礼とされてきた。このように、泰山は古くから多様な信仰や儀式の対象となってきたことから、中国の歴史の中にたびたび登場する山である。泰山の山中には道教の聖地として玉皇閣、中国の三大宮殿建築の一つとされる正殿の天貺(てんきょう)殿がある岱廟や、泰刻石、経石峪金剛経、無字碑、紀泰山銘などの石刻などの旧跡がある。こうした信仰の一方で、風光明媚な景観や名勝旧跡が数多くあることから観光地としてもにぎわい、古くから整備された岱頂への約7000段の石段のほか、現在では中腹まで自動車道路が整備され、山頂までロープウェーが通じ、手軽に登ることができる山になっている。◇英名はMount Taishan。泰山は中国語ではタイシャンと発音する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「泰山」の意味・わかりやすい解説

泰山
たいざん / タイシャン

中国、山東省中部、魯中(ろちゅう)山地最西部にある山脈。済南(さいなん)市の南東、泰安地区との境界を北東から南西に延び、全長約200キロメートル。主峰の玉皇頂は1524メートル、中国五岳の一つ「東岳」で、岱(たい)山または岱宗ともいう。1987年に世界遺産の複合遺産(文化、自然の両方の価値がある遺産)として登録されている(世界複合遺産)。震旦(しんたん)系の古い片麻(へんま)岩からなる断層山脈で、黄河下流部、華北平原部からは切り立ってそびえる。また、山地の表面には一部カンブリア・オルドビス系の石灰岩が覆うため、済南市の南方にはカルスト泉が湧出(ゆうしゅつ)し、突泉(ほうとつせん)や黒虎泉の名で知られている。山自体信仰の対象とされたが、南天門、雲歩橋などの名勝旧跡が多く、観光地としてにぎわい、中腹まで自動車道、山頂まではロープウェーが通じる。

[駒井正一]

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世界の観光地名がわかる事典 「泰山」の解説

たいざん【泰山】

中国の山東省の泰安市にある、世界遺産(複合遺産)に登録された山。道教の聖地である5つの山(五岳=泰山・衡山(こうざん)・恒山(こうざん)・嵩山(すうざん)・華山(かざん))の一つで、岱宗(たいそう)ともよばれる。「五岳独尊」ともいわれ、五岳で最も尊いとされる。秦の始皇帝から約2000年にわたって歴代の皇帝に尊崇され、国家統一を天に報告する「封禅の儀式」が行われる山として名高い。高さは1533m(最高峰は玉皇頂)。多数の祠や廟(びょう)などが山全体に点在するほか、山頂まで9kmにも及ぶ登山道は約7000段の石段からなり、この石段を老若男女が登り降りする姿が絶えないが、現在は、途中ロープウェイも運行されている。

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百科事典マイペディア 「泰山」の意味・わかりやすい解説

泰山【たいざん】

中国五岳の一つ。山東省泰安県北方にあり,五岳のうちでは東に位置することから,別名東岳とも呼ばれる。主峰の玉皇頂は標高1524m。中国第1の名山とされ,古来封禅の礼(天子が行う天地の祭り)が行われた。山中には寺廟多く,碧霞(へきか)元君をまつる本廟の壮麗さは有名。1987年世界遺産(自然・文化の複合遺産)に登録された。1983年中腹の中天門から山頂の南天門までのロープウェー(全長2078m)が完成した。
→関連項目泰山府君

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「泰山」の解説

泰山(たいざん)
Taishan

東岳ともいう。中国山東省の名山。中国五岳の一つ。秦漢以降,天子は泰山の頂で封(ほう)(天祭),禅(地祭)をなすべしとの道家(どうか)の説があり,始皇帝,漢の武帝,唐の玄宗,宋の真宗らはその盛儀を行った。現在まで道教第1の聖山。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

世界遺産情報 「泰山」の解説

泰山

泰山は中華人民共和国山東省泰安市にある山で、高さは1545m。 道教の聖地で、封禅の儀式が行われる山として名高く、中国五大名山の第一にランク付けされている霊山です。主として東嶽大帝と碧霞元君などを祭っています。泰山府君は病気や寿命、死後の世界での事など、生死に関わることに御利益があると信じられており、また碧霞元君は出産など、女性に関する願い事全般に利益があると信じられ信仰されています。ユネスコの世界遺産(複合遺産)に登録されています。

出典 KNT近畿日本ツーリスト(株)世界遺産情報について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「泰山」の解説

泰山
たいざん
Tài Shān

中国山東省の中央部にある名山。標高1545m
秦〜漢代以来,五岳(泰山・衡山・華山・恒山・嵩山)のうち,最も重要な東岳として崇拝された。後漢 (ごかん) のころ,人の生命を支配する泰山府君(道教の神東岳大帝)の居所とされ,後世,その息女碧霞元君 (へきかげんくん) の信仰が行われた。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「泰山」の解説

たいざん【泰山】

愛媛の日本酒。蔵元の「赤松本家酒造」は明治20年(1887)創業。所在地は宇和島市津島町上畑地。

出典 講談社[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクションについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の泰山の言及

【中島】より

…かんきつ類の栽培が盛んで,中島ミカンとして有名。島の北部の泰山(たいのやま)(289m)には忽那氏の城跡がある。南部の姫ヶ浜は海水浴場となっており,源義経が鎧を掛けたという伝説を伝える松などがある。…

【地獄】より

…一般に,墓地の情景や死体の腐乱過程との連想から生みだされたものだが,超常的な観念や表象によって作りだされた場合もある。〈地獄〉の語はもとサンスクリットに由来し,のちに仏教とともに中国に輸入されると,泰山府君の冥界観と結びついて十王思想を生みだし,さらに日本に伝えられると,記紀神話に描かれる黄泉国(よみのくに)や根の国の考え方と接触融合して独自の地獄思想を生みだした。地獄の観念に共通にみられる特色は因果応報や,受苦と審判の思想である。…

【泰山府君】より

…中国の五岳の一つ東岳泰山の神。東岳大帝ともいう。…

【東岳廟】より

…中国の五岳の一つ,東岳泰山の神をまつる道教寺院。泰山は古来天神が下り死者の霊魂が寄り集う霊山とされた。…

【臍】より

…崑崙山は仏教でいう贍部洲(せんぶしゆう)にある無熱悩池の北の香酔山(こうすいせん)のことで,道教と仏教の混交はここにも認められる。一方,中国では泰山も天斉と呼んだ。〈斉〉は中心のことで,へそを指す。…

【封禅】より

…中国の帝王がその政治上の成功を天地に報告するため,山東省の泰山で行った国家的祭典。〈封〉と〈禅〉は元来別個の由来をもつまつりであったと思われるが,山頂での天のまつりを封,山麓での地のまつりを禅とよび,両者をセットとして封禅の祭典が成立した。…

【冥府】より

…後漢時代には,墓券の記述に見られるように,黄帝が天帝の命を受けて死者を統治する神に当てられ,丘丞,墓伯,地下二千石,主墓獄史,墓門亭長といった冥界の官僚組織が考えられるようになった。また,霊魂の赴く場所としては各地の名山が当てられるようになり,なかでも山東省の泰山がその代表格とされた。泰山は古来山岳信仰の中心地であったが,泰山神が天帝の命を受けて人間の寿夭禍福をつかさどる神と考えられたことから,やがて寿命の尽きたものを拘引する冥府の神という性格を付与され,いわゆる泰山治鬼説が形成されて後漢から魏にかけて盛行した。…

【山】より

…たとえば《山海経(せんがいきよう)》には,天下の名山は5370,そのうち銅を産出する山は467,鉄を産出する山は3690と数えている。それら諸名山の代表は五岳,すなわち東岳の泰山(山東省),西岳の華山(陝西省),南岳の衡山(湖南省),北岳の恒山(河北省),中岳の嵩山(すうざん)(河南省)の五山であり,三公の地位になぞらえられて天子が祭りを行った。なかでも東岳泰山は,死者の霊魂が集まる冥府の所在地と考えられ,また,しばしば封禅の儀式が行われたところとして有名である。…

※「泰山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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