宅を移してその妻を忘る
とても大切なものを忘れてしまうことのたとえ。
[由来] 「[資治通鑑]―唐紀」に見える話から。七世紀の中国、唐王朝の時代。第二代皇帝の太宗が、あるとき、「西方の異民族の商人は、宝石を手に入れると、自分の肉を切り開いて体の中に隠してしまうそうだ。利益のために自分を忘れるとは、このことだな」と部下たちに話をしていました。すると、魏徴という大臣が、こんなことを言い出します。「昔、魯の国の哀公という君主が、『人に好く忘るる者有り、宅を徙して其の妻を忘る(忘れっぽい者がいて、引っ越しのときに妻を忘れて置き去りにしてきてしまったそうだ)』と言ったところ、孔子は、『もっとひどい者がいますよ。夏王朝の桀王や殷王朝の紂王といった暴君は、自分の身を忘れて好き放題の政治を行った結果、滅びてしまいましたから』と答えたそうですよ」。そう言われて、太宗も、自分を忘れる商人の話は他人事ではないことに、気づいたのでした。
出典 故事成語を知る辞典故事成語を知る辞典について 情報
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