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宝石 ほうせきgem; gemstone; precious stone

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

宝石
ほうせき
gem; gemstone; precious stone

美しさと耐久性および希少価値とを兼ねそなえ,装飾用や財産としても高く評価される鉱物の総称。色調透明度,硬さ,光沢などによって品質の価値が定まるので,それぞれの美しさの特徴が十分発揮できるような形にカットされる。 2500以上の天然鉱物のうち,宝石として用いられるのは 100以下で,重要なのは 16種程度。主要宝石名はダイヤモンドルビーサファイアエメラルドアレキサンドライト (以上五大宝石) ,キャッツ・アイ,トパーズガーネット,翡翠,オパールスピネルムーンストーン瑪瑙,水晶,ペリドットラピス・ラズリトルコ石ジルコン (ヒアシンス) などで,真珠をこれに含めることもある。

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百科事典マイペディアの解説

宝石【ほうせき】

装飾用などに用いられる美しい天然鉱物。宝石となる鉱物は,一般に色調が美しく,強い光沢,光の分散によるきらめきを有し,透明度が高く,硬度の大きいことが必要で,産出がまれなことも大きな条件となる。

宝石【ほうせき】

推理雑誌。1946年4月―1964年5月,全251冊。岩谷書店,のち宝石社発行。創刊時の主幹城昌幸横溝正史《本陣殺人事件》,江戸川乱歩《幻影城通信》の連載で,推理ファンの支持を得る。
→関連項目星新一

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デジタル大辞泉プラスの解説

宝石

ロシア出身、アメリカで活躍した振付家ジョージ・バランシンによるバレエ『ジュエルズ』の別名。原題《Jewels》。

宝石

日本の文芸雑誌のひとつ。推理小説、探偵小説を中心とする。1946年4月創刊。創刊当初は岩谷書店、1956年以降独立した宝石社が刊行。創刊時の主幹は城昌幸。江戸川乱歩、横溝正史らの連載が人気を集めた。懸賞小説による新人発掘にも努め、山田風太郎、日影丈吉らを輩出。1964年5月、宝石社の倒産により廃刊

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世界大百科事典 第2版の解説

ほうせき【宝石】

美しい色と輝きをもち,宝飾となる石。宝石のほとんどは鉱物に属し,その多くは結晶質構造をもつ。しかし一部には非晶質のオパールや黒曜石なども含まれる。また有機質の宝石として,真珠,サンゴ,コハク,さらに岩石でもとくに美しさをもつもの,たとえばラピスラズリやユナカイトなども広義の宝石に含められる。
[宝石の条件]
 宝石として認められる条件としては次の三つが挙げられる。(1)比類なく美しいこと(beauty) 宝石は色や透明度,光輝に優れていることが不可欠の条件である。

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大辞林 第三版の解説

ほうせき【宝石】

天然の鉱物で、産出量が少なく、硬質で色が美しく光沢に富み、装飾用として珍重されるもの。ダイヤモンド・ルビー・エメラルド・サファイア・アレキサンドライト・天然真珠など。貴石。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

宝石
ほうせき
gemgemstonejewel

外見上の美しさ、物理的な硬さ、産出の希少性を兼ね備えた、装飾に供しうる鉱物の総称。学術的に明確な定義は存在しない。また最初の2条件を満たす物質を合成して宝石としての目的に供するとき、これを合成宝石という。現在使用されている天然の宝石の多くは合成が可能である。鉱物として存在しないものをつくって同様の目的に用いるとき、これを人造宝石(または人工宝石)という。等方性ジルコニア(キュービック・ジルコニア)はそのもっとも有名な例である。ほかに価値の低いものをさまざまな方法で加工して価値を高めることもある。加熱、加圧、γ(ガンマ)線照射、着色などがそのおもな方法で、青色トパーズ、青色ジルコン、黄水晶などはこうした処理でつくられたものである。また、複数の切片を張り合わせて一つの大きな宝石にみせるというような処理方法もあり、オパールではしばしば行われている。[加藤 昭]

宝石となる鉱物の諸性質

外見上の美しさは、色、透明度、輝きなどによって支配されるが、透明度の高いものはカット加工され、またある種の光学的特性をもつような場合は、その特性がより強調されるように研磨加工される。ダイヤモンドをはじめとして、屈折率の高いものは前者に、スター・サファイアなどいわゆる光芒(こうぼう)(一点を中心として二方向へ走って光る筋(すじ))を示すものは後者に属する。宝石の色としては以下の例がある。
(1)無色~淡色あるいは白色 ダイヤモンド、トパーズ、緑柱石、電気石、水晶、ジルコン、たんぱく石(オパール)、スピネルなど
(2)紫色 紫水晶(アメシスト)、スピネル、ターフ石taaffeiteなど
(3)青色 サファイア、電気石、ダイヤモンド、菫青(きんせい)石、青金石lapis lazuli、方ソーダ石、トルコ石、アクアマリン
(4)緑色 エメラルド、ひすい輝石、リチア輝石、電気石、苦土橄欖(かんらん)石、アレキサンドライト、碧玉(へきぎょく)、くじゃく石
(5)黄色 トパーズ、黄水晶、ダイヤモンド、こはく、電気石、苦土橄欖石
(6)褐色 シンハラ石sinhalite、トパーズ、満礬(まんばん)ざくろ石、ジルコン
(7)赤色 ルビー、スピネル、鉄礬ざくろ石、ダイヤモンド、たんぱく石
(8)桃色 電気石、リチア輝石、緑柱石(モルガナイト)、スピネル、紅水晶
(9)黒色 赤鉄鉱、電気石、ざくろ石
 なお、宝石のなかには、アレキサンドライトのように、日光では緑系統の色、白熱光では赤色を呈するような例や、電気石、菫青石のように、方向によって色の変化する、いわゆる多色性をもつものもある。もちろんこれらは天然のままの色であるが、既存の宝石、貴石、飾り石と同質の鉱物に対して、染料着色あるいは変色させたり、放射線、中性子線などを用いて人工的に変色させたりすることもある。また、さまざまな条件下で加熱処理を施し、色を変化させたりすることもある。黄色から褐色系統のもののなかには、こうした処理の産物である場合もある。
 物理的な硬さとしては、モース硬度にして7(石英)以上の値をもつものが選ばれるが、トルコ石は例外的に硬度5程度である。産出の希少性については、ある程度美しい色、透明度、硬さをもった鉱物は、それだけでまれである。したがって、これらの要素のうち一部のみを満足する場合でも装飾の素材となることがあり、貴石(さらに程度が下がれば半貴石)、飾り石などのような用語でよばれることもある。また宝石としての必要条件に、薬品、熱あるいは光線の直射に対する安定性もあげられることがあるが、硬度の高い物質は、多くこれらの条件を満たしている。
 宝石として用いられる鉱物としては、ダイヤモンド、コランダム(ルビーおよびサファイア)、緑柱石(エメラルド、モルガナイトおよびアクアマリン)、スピネル、金緑石(アレキサンドライト)、トパーズ、ざくろ石、ジルコン、電気石、たんぱく石(オパール)、トルコ石(トルコ玉ともいう)、ひすい輝石、苦土橄欖石、シンハラ石、ターフ石などがあり、これらよりやや等級の劣るものとしては、苦礬(くばん)ざくろ石、鉄礬ざくろ石、紅柱(こうちゅう)石、珪(けい)線石、菫青石、フェナク石、透輝石、リチア輝石、灰簾(かいれん)石、石英(紫水晶、黄水晶、黒水晶、煙水晶)、玉髄(ぎょくずい)(めのう、碧玉(へきぎょく))、青金石、こはくなどがあり、貴石という名称で一括されることもある。
 さらに次の段階である飾り石としては、長石類、赤鉄鉱、あられ石、蛍石、くじゃく石、ばら輝石、蛇紋石、方ソーダ石、ベスブ石、透閃(とうせん)石(軟玉)、クロチド閃石(虎目石(とらめいし))などがある。鉱物なみに飾り石としての扱いをされる岩石に黒曜石とテクタイトがある。また1978年にロシアで認定された新鉱物チャロ石charoiteは美しい淡紫色の繊維状結晶の緻密(ちみつ)な集合をなし、飾り石として加工され、世界各地に広まっている。
 真珠は宝石として扱われることも多く、事実、成分的には炭酸カルシウムからなっているが、有機的に生成されるため鉱物とはいいがたく、ここでは宝石として取り扱わない。[加藤 昭]

産状および産地

ダイヤモンドは、そのほとんどがキンバレー岩中、あるいはこれが分解して生じた土壌、砂鉱(さこう)(漂砂鉱床)中に産する。隕石(いんせき)や超高圧変成岩中のものはきわめて微粒である。南アフリカ共和国、ロシア、ブラジルのほか、中国やオーストラリアでも産出が知られている。ルビーの良質のものは、再結晶石灰岩中のもので、ミャンマー、スリランカ、インドなどが世界の供給源である。サファイアの産状としては、玄武岩あるいはこの分解によって生じた土砂中のものが重要で、ミャンマー、インド、スリランカなどに知られる。オーストラリア産のものは、泥質岩起源の高温生成の変成岩中のものである。
 エメラルドの産地としては、ロシアのウラル地方、南米コロンビアなどが有名で、いずれの産地でも泥質岩起源の黒雲母(うんも)片岩、あるいはこれを貫く石英脈中に産する。コロンビアでは、特殊な炭酸塩岩中に産するエメラルドもある。エメラルドは硬度の高いわりにもろく、砂鉱に入ることはほとんどない。モルガナイトは、おもに花崗(かこう)岩質ペグマタイト中に産する。アクアマリンの最大産地はブラジルのミナス・ジェライスMinas Gerais州で、花崗岩質ペグマタイト中に産する。スピネル(尖晶(せんしょう)石)のうち宝石となるものは、再結晶石灰岩あるいは苦灰岩中か、これらに由来する砂鉱中のもので、赤から紫系統の色のものが宝石として重要視される。アレキサンドライトはエメラルド同様黒雲母片岩中のものとペグマタイト中のもの、あるいはこれらを源とする砂鉱などから産する。トパーズはペグマタイト中のものが重要で、ブラジル、ロシア、ドイツなどに著名産地があるが、日本の岐阜県中津川市苗木(なえぎ)、滋賀県大津市田上(たなかみ)山、山梨県甲府市黒平(くろべら)なども有名である。なおアメリカのユタ州では、流紋岩中に美晶を産する所がある。ざくろ石は鉱物学的には十数種の独立種からなる一つの鉱物群であるが、宝石(あるいは貴石、飾り石)として用いられるものは、灰礬(かいばん)ざくろ石、苦礬(くばん)ざくろ石、鉄礬ざくろ石、満礬ざくろ石、灰鉄ざくろ石の5種である。灰礬ざくろ石は再結晶石灰岩中のもので、スリランカ産のものが有名である。苦礬ざくろ石は高温高圧条件下でのみ生成される鉱物で、ボヘミア産のエクロジャイト中のものが名高く、また南アフリカ共和国のキンバレー岩中にも良質のものがある。鉄礬ざくろ石は、片麻(へんま)岩、花崗岩質ペグマタイト、流紋岩などの中に産し、満礬ざくろ石もほぼ同様の産状をもっている。灰鉄ざくろ石は再結晶石灰岩、超塩基性岩、緑色片岩、霞石閃長(かすみいしせんちょう)岩中などに産する。
 ジルコンは、スリランカの砂鉱中のものが透明度が高く、最上質といわれている。これはおそらく時代の古い片麻岩に起源をもつものと考えられる。電気石系列の鉱物中、宝石の要素をもつものは、リチア電気石elbaiteと新鉱物の灰リチア電気石(リディコート石liddicoatite)、苦土電気石draviteの3種で、始めの2種はアメリカのカリフォルニア州、苦土電気石はマダガスカル島のものが有名で、いずれもいわゆるリチウムペグマタイトの構成鉱物である。苦土電気石は塩基性火成岩、あるいは泥質岩起源の結晶片岩、再結晶石灰岩中などに産する。たんぱく石(オパール)のうちで宝石としての価値をもつ、いわゆる貴たんぱく石は、酸性火山岩あるいは火砕岩中の団塊として、もしくは地下浅所でケイ酸分に富んだ地下水からの沈殿物の構成成分として産し、メキシコ産のものは前者の、オーストラリア産のものは後者の例である。日本では、福島県耶麻(やま)郡西会津(にしあいづ)町宝坂(ほうさか)でまれに貴たんぱく石といわれているものを少量産する。トルコ石は泥質岩あるいは粗面岩などアルミニウム分の多い岩石中に細脈や塊をなし、また銅鉱床の酸化帯に産する。世界的な産地としては、イラン、シナイ半島、エジプト、ロシア、北アメリカ、オーストラリアなどで、トルコは単にイラン産のもののヨーロッパへの窓口であったにすぎない。ひすい輝石は高圧条件下でのみ生成される一種の変成鉱物で、塊状をなすものは、蛇紋岩のような超塩基性岩に伴われる曹長岩の主成分として産する。ミャンマー、中国のものはとくに有名で、日本でも新潟県糸魚川(いといがわ)市にひすい輝石の産地がある。苦土橄欖石は普通に産する鉱物であるが、宝石用のものの産地は少なく、紅海のセント・ジョーンズ島以外には、オーストラリア、ミャンマー、アメリカなどにいくつかの産地があるだけである。シンハラ石は、1952年、スリランカ(当時のセイロン)産の橄欖石と誤認されていた宝石を研究して新鉱物として発表したもので、理想式MgAlBO4、再結晶苦灰岩中に生成されたものが砂鉱に入り、そこでも採集された。その後アメリカ・ニューヨーク州からも発見されたが、宝石としての価値はない。ターフ石も同様に、1951年イギリスのターフ伯爵が、自分の入手した「スピネル」が非等方性であることを発見し、研究の結果MgBeAl4O8(のちMg3BeAl8O16に訂正)の化学組成をもつ新鉱物であることが判明し、彼にちなんで命名されたものである。その後中国、オーストラリアなどからも産出が報告されている。[加藤 昭]

宝石としての加工・利用

宝石はほとんどすべての場合、表面を研磨し、またその美しさを十分発揮できるように整形するのが普通で、その方法には代表的なものとして次の四つがある。すなわち、カボションcabochon、ローズrose、ブリリアントbrilliantおよびステップstepである。
 カボションは比較的低硬度の不透明ないし半透明のものに対して応用される方法で、球あるいは回転楕円(だえん)体に近い形に仕上げたもの、これを長軸に平行に切り、断面を膨らませたものや断面を平らにしたもの、また逆に凹(へこ)ませたものなどがあり、球状に磨かれるものにはスター・サファイア、断面を膨らませた形にするものにはたんぱく石など、平らな切断面のものは虎目石、月長石などに応用されている。ローズは低い錐(きり)状の断面をもつもので、通常は一つの大きな底面に錐(すい)面として24個の小三角面をもつもので、かつてはダイヤモンドに適用された。ブリリアントは、ダイヤモンドや人造のキュービック・ジルコニアに用いられている方法である。一方はクラウンcrownとよばれる頂部が平面の角錐台で、合計33個の小さい面をもち、反対側は25個の面をもつ角錐に近い立体で、この部分をパビリオンpavillionという。両者の境界の稜(りょう)にあたる部分をガードルgirdleという。クラウンの平面部はテーブルtable、パビリオンの頂点はキュレットcuretteとよばれる小さな平面となっている。現在は総計102個の面をもつブリリアント・カットが広く用いられている。宝石の屈折率に応じてクラウンとパビリオンの角度を調節し、表面から入った光線がすべて反射されるように設計可能なのがブリリアント・カットの特徴の一つである。ステップは正方形あるいは長方形の角をとった八角形の輪郭に大きなテーブルとこれに接する平行な傾斜面をもち、パビリオン相当の部分もガードルに平行な稜をもったいくつかの傾斜面からなっている。これは電気石、エメラルド、苦土橄欖(かんらん)石などによく用いられるカットである。
 宝石の利用は、たとえばダイヤモンドにおいては、世界全体の産額の90%以上が工業用の目的に使用されているが、実生活と直接関係するのは、一つの貴重品として財産価値を賦与された場合である。当然そのような宝石は、装身具としての重要性も大きいが、古くから、ある特定の宝石を1年12か月に対応させ、その月に生まれた人がその宝石を身につけると幸福をもたらすという言い伝えがあった。これが誕生石のおこりで、18世紀ごろからヨーロッパで流行することとなった。現在、誕生石としてもっとも広く受け入れられているものは次のとおりである。1月(ざくろ石)、2月(紫水晶)、3月(血石(けっせき)、赤色の碧玉)、4月(ダイヤモンド)、5月(エメラルド)、6月(真珠)、7月(ルビー)、8月(縞(しま)めのう)、9月(サファイア)、10月(たんぱく石)、11月(トパーズ)、12月(トルコ石)。[加藤 昭]

宝石と装い

東西の美意識の違いから、西洋では光を反射して鮮やかに輝く宝石が好まれ、ダイヤモンド、ルビー、エメラルド、サファイア、真珠が五大宝石とよばれて珍重されてきた。東洋では七宝(しっぽう)、七珍(しっちん)といわれる金、銀、サンゴ、真珠、瑠璃(るり)(ラピスラズリ)、玻璃(はり)(水晶)、めのうが貴ばれる。日本では、光を吸収してしっとりと深い色彩をたたえた、ひすい、サンゴ、こはく、めのう、べっこう、真珠、水晶、白色オパールなどがとくに好まれてきた。一般的に、オレンジ系のメキシコオパールを好む日本人に対して、欧米では寒色系のオーストラリアオパールに人気がある。日本人の肌色には、真珠ならばクリーム系、エメラルドやひすいのグリーン、そしてざくろ石(ガーネット)やルビー、サンゴなどの暖色系の石がよく映える。白色人種に似合うサファイア、トルコ石、ラピスラズリなどの鮮やかなブルー、そしてピンク系やブラック系の真珠は日本人向きではないといわれていたが、誕生石の影響もあってか、現在では好みの石を自由に用いている。
 和装では、指輪、帯留、髪飾り、羽織の紐(ひも)などに、伝統的な日本人好みの宝石を用いてきた。たとえば、時計をセットした宝石入りの指輪(和服には腕時計が不調和なので)、洋装のブローチにもなる宝石の帯留、数珠(じゅず)リング(旅先や略式の仏事に用いる指にはめる小さな数珠)などがある。
 洋装の場合、昼間はカジュアルに、夕方以後はドレッシーにというのが装いの鉄則であるが、宝石の使用も当然これに従ってきた。昼の光のなかでは石の色彩を楽しみ、夜の照明の下では石の輝きを愛(め)でることになり、透明度の高いものほど夜の雰囲気にふさわしい石となる。夜の正装にあう石は、先に述べた五大宝石、または七大宝石(五大宝石のうち真珠を除き、ひすい、猫目石、アレキサンドライトを加える)をはじめ、スタールビー、スターサファイア、ムーンストーン、オパール、アメシスト、トパーズなど。
 昼の装いにふさわしい石は、ざくろ石、アメシスト、サンゴ、アクアマリン、サードオニクス、トルコ石、くじゃく石、ラピスラズリ、こはく、めのうなどである。しかしダイヤモンドと真珠は、昼夜を問わず使ってもよいオールマイティの石とされ、今日では宝石のTPO(時、所、場合)は大きく崩れてきている。規則にとらわれず個人の好みで、季節によって、年齢によって、それぞれの石のもつ外観やフィーリングを楽しむことができる。[平野裕子]

宝石の文化史

宝石は、現代人がその色と光に美しさを感じ、絶対量の少なさも加わって貴重品として貴んでいるが、こうした価値規準が歴史上普遍な、あるいは汎(はん)世界的なものであったとは限らない。もっとも一般的な形では、「たま」として古くから用いられていたが、何を「たま」とよぶかは、時代や地域によって異なっていた。日本では縄文時代から玉(ぎょく)製の勾玉(まがたま)や管玉(くだたま)がつくられ始め、弥生(やよい)、古墳時代に装身具として盛行し、日本神話のなかでも三種の神器の一つとして「たま」は登場する。中国でも「王」という字がひすいの「たま」を三つ連ねた象形文字からきたものといわれている。
 しかし、宝石として価値を高めるようになるのは、ヨーロッパでの貴金属工芸、とくに象眼(ぞうがん)細工の発達に負うところが大きい。シュメール人は、黄金の数珠(じゅず)玉に瑠璃(るり)や紅玉髄(こうぎょくずい)、めのうや碧玉(へきぎょく)、大理石や銀を並置させ、みごとな首飾りなどをつくりだしている。指輪にも関心をもった彼らは、黄金板を宝石のはめ込み台として生地(きじ)にはんだ付けし、宝石の大きさを調整して接着剤で固定した作品を生み出している。
 このほか、バビロニアの王ハムラビの石柱に彫刻された太陽神シャマシュの像をはじめとして、アッシリアの諸王の記念碑には、驚くほどの量の宝石がちりばめられている。一方エジプトでも、すでに第1王朝の王妃の腕飾りにラピスラズリ、トルコ石、アメシストが用いられている。第18王朝のツタンカーメン王の墳墓で発見された副葬品の豪華さは有名である。国王の像を高浮彫りにした棺の蓋(ふた)だけに言及しても、七宝(しっぽう)細工の帯で襟が装飾され、翼を広げたハゲタカの形をした二女神が庇護(ひご)するようにみえる下半身と腕の部分は、瑠璃、紅玉髄、緑長石、不透明多彩のガラスで飾られている。
 初期ギリシア時代の宝石については、ホメロスが『イリアス』のなかでアキレウスの盾を記述しながら触れているし、同じギリシアの土地から、ミケーネ文明に属する黄金などで象眼した玉石が、シュリーマンの手で発見されている。
 宝石に関する俗信は世界各地で知られる。宝石のもつ硬度、輝き、美しい色彩が、神秘的な、特別な力をもつと信仰される理由の根源にあると考えられ、護符として携帯することが多い。たとえばルビーは、古代インドでは持ち主に健康や富、知恵や幸福をもたらすとされ、中世ヨーロッパでも毒消し、落雷とコレラよけの効力をもつとされていた。誕生石の信仰も元をただせば、こうした信仰から生まれた。また、宝石を1年の12か月に割り当てるという占星学にたけたカルデア人の風習をはじめとしたさまざまな俗信からは、月々の宝石を身につければ幸福になるという信仰が生まれるが、後代宝石の価値の上昇とともにこのぜいたくな行為が不可能になり、自分の生まれ月の宝石だけを身につける習慣に変わっていった。
 宝石のもう一つの重要な役割は、医薬として用いられたことにある。エメラルド、ルビー、サファイア、ざくろ石、真珠などは、中世医学のなかで堂々と取り上げられている薬であり、通常粉末にしたものを調合する。また、止血療法として血石(けっせき)を患部にあてがうという記録や、わき腹の痛みを和らげるのには「ひすい」がよいという俗信はよく知られている。とくにひすいjadeiteの語源は、スペイン語の「わき腹の石」に由来している。古代ギリシアの宝石細工の職人たちはエメラルドを見ては目の疲れをいやしていたというが、この方法は現代科学でも認められている。このエメラルドは、のどとあごの病気を治すものとも考えられる一方で、悪魔を退ける宝石とみなされていた。こうした宝石のもつ象徴性に目を向けると、ざくろ石が貞操、友愛、忠実を表現しているし、アメシストは高い徳と理想、権威のシンボルであった。このほか、貞操、純粋を象徴し、怒りを和らげ恋の勇気を与え、夫婦間の信頼を壊さぬ宝石としてダイヤモンドを、また富や処女の象徴として真珠をあげることができる。[関 雄二]
『P・J・フィッシャー著、崎川範行訳『宝石の科学』(1970・共立出版) ▽砂川一郎・鹿子木昭介著『宝石の話』(1970・出光書店) ▽ジャン・ランリエ、マリー・アンヌ・ピニ著、菱田安彦・田辺貞之助訳『世界の宝石美術館――ルネッサンス以後のジュウリー・デザイン』(1972・鎌倉書房) ▽H・バンク著、川田功訳『宝石の世界』(1974・日貿出版社) ▽寺内隆著、近山晶監修『宝石手帖』(1975・ブックマン社) ▽酒井美恵子・池田裕著『宝石全書』(1977・主婦と生活社) ▽ロバート・ウェブスター著、砂川一郎監訳『宝石学gems――宝石の起源・特性・鑑別』(1980) ▽近山晶編著『宝石学必携』新訂(1983) ▽近山晶著『宝石――その美と科学』(1984・以上全国宝石学協会) ▽乙竹宏・塩月弥栄子監修『宝石宝飾事典』改訂版(1985・講談社) ▽白水晴雄・青木義和著『宝石のはなし』(1989・技報堂出版) ▽『ビジュアル博物館25 結晶と宝石』(1992・同朋舎出版) ▽C・ホール著、H・テイラー写真、宮田七枝訳『完璧版 宝石の写真図鑑――オールカラー世界の宝石130』(1996・日本ヴォーグ社) ▽エンマ・フォーア著、砂川一郎監修『ポケットペディア 結晶と宝石』(1998・紀伊國屋書店) ▽ジャック・オグデン著、小山修三監修、園田直子訳『宝石の考古学』(1998・学芸書林) ▽諏訪恭一著『宝石』全3巻(1999~2002・世界文化社) ▽北出幸男著『宝石の力――幸運は形に宿る』(2003・青弓社) ▽崎川範行著『宝石』(保育社・カラーブックス) ▽F・H・プー著、原田馨訳『宝石に強くなる本』(講談社・ブルーバックス) ▽塩月弥栄子著『宝石の本』(光文社・カッパ・ホームス) ▽砂川一郎著『宝石は語る』(岩波新書)』

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