害虫抵抗性作物(読み)がいちゅうていこうせいさくもつ(その他表記)insect‐resistance crop

知恵蔵 「害虫抵抗性作物」の解説

害虫抵抗性作物

遺伝子組み換え品種の1つ。土壌細菌のバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis:Bt菌)のBt遺伝子を作物に導入している。Bt遺伝子から作られるたんぱく質は、特定の種類の昆虫に対して殺虫作用を示すため、遺伝子組み換え作物は葉や茎を食害する害虫から守られ、殺虫剤の散布回数や使用量を減らせる。Btたんぱく質を昆虫が摂取すると、消化管内がアルカリ性のため部分的に消化され、毒性を示すペプチド(アミノ酸が少数個結合したもの)ができ、この毒性ペプチドが腸管細胞の受容体(結合する相手)に結合して細胞が破壊され、殺虫性が生じる。哺乳類では胃内が酸性で毒性ペプチドがほとんど生成されず、生成しても腸管細胞に受容体がないために毒性は現れず、動物実験でも安全性が確認されている。トウモロコシジャガイモワタなどにこの品種がある。

(川口啓明 科学ジャーナリスト / 菊地昌子 科学ジャーナリスト / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

南海トラフ臨時情報

東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...

南海トラフ臨時情報の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android