日本大百科全書(ニッポニカ) 「家わけ文書」の意味・わかりやすい解説
家わけ文書
いえわけもんじょ
東京大学史料編纂(へんさん)所の編集している寺院、神社、武家などの所蔵者別古文書集。大日本古文書の一つ。1904年(明治37)刊行開始の高野山(こうやさん)文書から、1981年(昭和56)に刊行が開始された蜷川(にながわ)家文書まで、21編99冊(1983年3月31日現在)が出版されており、そのうち、醍醐(だいご)寺、東(とう)寺、東大寺、大徳(だいとく)寺、蜷川家などはいまなお継続刊行中である。
家わけ文書の編集は、まとまって所蔵されている古文書は、編年順に分断して利用するよりも、所蔵者ごとに一まとまりのものとして利用するほうが研究上有意義であるという認識に基づいたもので、その出版は、中世寺社領の研究などの社会経済史的研究の発展に大きく寄与し、古文書の機能、形態を研究する古文書学の形成を促すとともに、以後の古文書集の体裁の原形をつくりだしたものであった。
[千々和到]