醍醐(読み)ダイゴ

デジタル大辞泉 「醍醐」の意味・読み・例文・類語

だい‐ご【××醐】

五味の第五。牛や羊の乳から精製した、最上の味のもの。仏の悟りや教えにもたとえる。

だいご【醍醐】[地名]

京都市伏見区の地名醍醐寺がある。

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精選版 日本国語大辞典 「醍醐」の意味・読み・例文・類語

だい‐ご【醍醐】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 仏語。牛乳を精製して作った純粋最上の味のもの。非常に濃厚な甘味で薬用などに用いる。また、如来の最上の教法にたとえる。
      1. [初出の実例]「無福之徒、不論貴賤、不知辛臭、常沈蓼溷、已忘醍醐」(出典:三教指帰(797頃)下)
      2. 「醍醐の妙味を甞めて言詮の外に冷暖を自知するが如し」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉四)
      3. [その他の文献]〔北本涅槃経‐一四〕
    2. だいごりゅう(醍醐流)」の略。
      1. [初出の実例]「此時正諸流声明、即相応院、醍醐、進流是也」(出典:声決書(1396)(古事類苑・宗教部四))
  2. [ 2 ]
    1. [ 一 ] 京都市伏見区の東部にある地名。醍醐山の西側の麓一帯をいう。醍醐寺、醍醐・朱雀天皇陵があり、奈良街道が通じる。
      1. [初出の実例]「醍醐の山にこもりたるよしきこえしかば、おしよせてさがせどもなし」(出典:平家物語(13C前)一二)
    2. [ 二 ] 滋賀県浅井(あざい)町の地名。縄文中期の遺跡がある。
    3. [ 三 ]だいごじ(醍醐寺)
      1. [初出の実例]「醍醐に僧有けり」(出典:今昔物語集(1120頃か)一四)

醍醐の補助注記

牛乳を精製するにあたって発酵の段階により五つ(乳、酪、生酥(しょうそ)、熟酥、醍醐)に分け、それら五つの味を「五味」という。後のものほど美味で、「醍醐」がその最高の味とされる。そこから「醍醐味」という語も生まれた。

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日本歴史地名大系 「醍醐」の解説

醍醐
だいご

[現在地名]寒河江市慈恩寺じおんじ

日和田ひわだ村の西に位置し、広義には慈恩寺の山内・山下全体を、狭義には山下の寺領、里前の村をよんだ。最上慈恩寺略縁起(最上院文書)には「寺領八鍬郷・箕輪郷・醍醐里共勅賜并大檀那等寄附供料也」とあり、享保一二年(一七二七)の慈恩寺伽藍記(宝蔵院文書)には「供料八鍬郷自往古領之、箕輪郷中古領之、醍醐里山下」とあり、醍醐は古くから寺領として存続したと考えられる。天保郷帳には高三八三石余の醍醐が載る。明治三年(一八七〇)山内を含めた醍醐は慈恩寺村となった。

享徳三年(一四五四)四月一四日、阿闍梨善栄は上醍醐にある慈恩寺供僧職御影供田八〇〇束刈を買得し、供僧職に補任されている(「阿闍梨幸調供僧職御影供田補任状案」禅林坊文書)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「醍醐」の意味・わかりやすい解説

醍醐
だいご

京都市伏見(ふしみ)区東部の一地区。旧醍醐村。山科(やましな)盆地南東部にあたり、醍醐山(454メートル)付近の上(かみ)醍醐と西麓(せいろく)の下醍醐に分かれる。真言宗醍醐派総本山の醍醐寺(世界文化遺産に登録)があり、寺域は上醍醐から下醍醐に及ぶ。応仁文明(おうにんぶんめい)の乱(1467~1477)には一山ほとんど灰燼(かいじん)に帰し、豊臣(とよとみ)秀吉によって再建された。五重塔は創建当時唯一の遺構で、京都市内最古の木造建物である。境内にはサクラが多く、秀吉は再興を祝して花見の宴を催したが、今日も4月には豊太閤花見行列(ほうたいこうはなみぎょうれつ)が行われる。市営地下鉄東西線醍醐駅がある。

織田武雄

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百科事典マイペディア 「醍醐」の意味・わかりやすい解説

醍醐【だいご】

京都市伏見区東部の一地区。山科盆地南部から醍醐山西麓一帯を占める。醍醐寺法界寺所在地として知られ,桜の名所。近年は住宅地化が著しい。
→関連項目京都[市]

醍醐【だいご】

仏説の五味(乳味・酸味・生酥(しょうそ)味・熟酥味・醍醐味)の一つ。牛または羊の乳を精製した濃厚液で,五味中最良の味とされる。
→関連項目チーズ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「醍醐」の意味・わかりやすい解説

醍醐
だいご

京都市伏見区の一地区。旧村名。 1931年京都市に編入。山科盆地の南方に位置し,古くは大和から近江にいたる交通の要地。大規模な住宅団地があり,京都市の新しい住宅地区となっている。醍醐山に真言宗醍醐派の総本山醍醐寺があり,五重塔をはじめ,金堂,薬師堂などの国宝建造物のほか著名な書画彫刻所蔵,それらの多くは国宝に指定されている。山麓門前町には秀吉が造らせた三宝院庭園 (特別史跡・名勝) がある。

醍醐
だいご
maṇḍa

仏教用語。五味の一つ。牛乳を精製してつくったもので,最も美味とされ,病をなおす妙薬とされる。その意味から仏性涅槃にたとえられる。

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「醍醐」の解説

醍醐
だいご

乳製品の一種。仏典によると乳から酪(らく)ができ,酪から蘇(そ)ができ,蘇から醍醐ができるという過程をへる。しかしこれは,「醍醐」が究極の悟りであり最上のものであるという比喩として語られたもの。「沙石集」や「平家物語」にも五味として「乳・酪・生蘇・熟蘇・醍醐」がみえるが,あくまで仏教の教説のたとえであり,日本では実在の食品とは考えにくい。

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デジタル大辞泉プラス 「醍醐」の解説

醍醐〔メニュー〕

三重県鈴鹿市のサンドイッチ専門店「鞍馬サンド」のメニューのひとつ。生クリーム、小粒納豆と細かく砕いたコーヒーゼリーを食パンに挟んだサンドイッチ。

醍醐〔店名〕

東京都港区にある精進料理店。1950年創業。

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世界大百科事典(旧版)内の醍醐の言及

【甘露】より

…また〈不死なるもの〉の意味から永遠の生命をもつ仏の教え,あるいは仏の教えによる悟りの境界を示すものともされた。甘露が醍醐(だいご)とも訳されるのはこの意味からである。なお,密教経典では阿弥陀仏(あみだぶつ)の阿弥陀はamṛtaの俗語形であると解釈し,阿弥陀仏と甘露とを同一視している。…

【蘇】より

…やがて蘇をはじめとする乳製品は律令政治の命運とともに衰退し,1334年(建武1)の《若狭国貢蘇役文書案》を最後にほとんど記録上から姿を消す。 蘇については,《本草和名》《和名抄》《医心方》などが中国の文献を引用して,牛乳から酪(らく),酪から蘇,蘇から醍醐(だいご)が作られ,酪はニウノカユと呼ばれ,蘇は黄白色をしており,醍醐は蘇の精液であるという。蘇の作り方に関する唯一の手がかりは《延喜式》民部下にある〈蘇を作る法は,牛乳1斗を煎(せん)じて蘇1升を得る〉,つまり牛乳を1/10に煮つめたものという記述である。…

【乳】より

…上記のアマルテイアはコルヌコピア(〈豊饒の角〉)と結びつけられている。 牛乳は古代インドでも重宝(ちようほう)されて最高の美味をもつ醍醐(だいご)(〈醍醐味〉はこれに由来する)の原料だった。日本でも,つとに奈良時代初期,山背国の乳牛飼育を調査した記録が《続日本紀》にあり,平安時代の医書《医心方》では牛乳からつくった酥(そ)が健康食として勧められている。…

【中国料理】より

碾磑(てんがい)という水車を利用した石臼による製粉法もこの時代いっそう発達し,粉食の普及に輪をかけた。胡餅のほか,酪(乳酸飲料),酥(クリーム),醍醐(ヨーグルト),乳腐(チーズ)などがもてはやされた。陸羽の《茶経(ちやきよう)》に代表されるように唐代には飲茶の風習が広がるが,砂糖もこの期には甘蔗(サトウキビ)からとられ製糖業がおこっている。…

※「醍醐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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