旺文社日本史事典 三訂版 「富山売薬」の解説
富山売薬
とやまばいやく
家内工業で行商による販売が特色。江戸前期,反魂丹 (はんごんたん) という丸薬を中心に始まり,藩の保護統制下に全国的に拡大。行商人は分担区域の得意先に薬を預け,次回訪問時に消費分の代金を集めた。
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…越中新川郡七かね山(松倉・河原波・虎谷・下田(げた)の金山,吉野・亀谷(かめがや)の銀山,長棟(ながと)の鉛山),婦負郡片掛銀山は初期には加賀・富山両藩のドル箱であったが急速に衰滅した。富山売薬は反魂丹(はんごんたん)を主薬とする和漢の行商人による配置制度で商圏を全国にのばした。このほか富山湾における台網(定置網)漁業,礪波郡の八講布・城端絹,新川郡の新川木綿は,近世に興って近代軽工業発展の基盤となった。…
…そして加賀藩時代の経済体制からの脱却をはかった。数万俵の瀬戸内塩,能登塩を取り扱う塩問屋を金沢町人から富山町人の手に移し,修験道売薬を差し止め,反魂丹を主とする富山町人による商業売薬を始めて富山売薬の基礎をつくり,繰綿,藍玉をはじめ各種の営業特権を富山町人に与えていった。富山は陸海交通の要所で,飛驒街道を分岐し,また神通川に面する木町舟方は早くから栄えていた。…
…歴代藩主は正甫,利興,利隆,利幸,利与,利久,利謙,利幹,利保,利友,利声,利同と続き,廃藩置県にいたる。正甫のとき始まった富山売薬は,〈反魂丹(はんごんたん)〉をはじめ草根木皮を原料とする和漢薬で,行商人が全国の得意先を回って薬をおく配置制度で成果をあげ,藩財政にも寄与した。【坂井 誠一】。…
…売薬名。同名の売薬は各地にみられたが,越中富山売薬の主力商品として知名度が高かった。それは越中売薬の行商が配置販売方式を採用し,現物を先渡しして翌年使用済みの分だけの代金を受け取り,残品は新品と交換し,さらに補充配置するという行商方式で全国に行商圏を広げていたからである。…
※「富山売薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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