小子部蜾蠃(読み)ちいさこべのすがる

改訂新版 世界大百科事典 「小子部蜾蠃」の意味・わかりやすい解説

小子部蜾蠃 (ちいさこべのすがる)

《日本書紀》や《日本霊異記》などにみえる雄略天皇の侍臣。その名の〈蜾蠃〉とはジガバチの意。〈蜾蠃〉は〈螟蛉めいれい)〉(古注では〈桑虫〉)の子をみずからの子として養う,と《詩経》にある。《日本書紀》雄略天皇条によれば,〈蚕(こ)〉を集めよとの命をうけ,誤って〈子〉を集め,養い,〈小子部連(むらじ)〉の姓を賜う。また,三諸岳(みもろのおか)の神を捕らえよとの命により大蛇を捕らえ,〈小子部雷(いかずち)〉と改名した。《弘仁私記》序には〈山雷〉を捕らえたとある。《日本霊異記》は,天の雷を捕らえ,その地を〈雷岡(いかずちのおか)〉と呼んだ,とする。さらに,蜾蠃の死後に彼の墓標に落ちた雷が標柱にはさまって捕らえられ,〈生きても死にても雷を捕りし蜾蠃の墓〉と墓標に記された,とする。《新撰姓氏録》には,小子部雷が秦(はた)氏を召集し,その秦氏が養蚕を行ったこともみえる。いずれの伝承も雷や蚕にかかわっており,古代の雷神信仰と養蚕との深い関係をうかがわせる人物である。
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世界大百科事典(旧版)内の小子部蜾蠃の言及

【雷】より

…大気は導電率がきわめて低く,通常は絶縁体として扱われる。ところが大気に加わる電位差が1mあたり5×105Vをこえると,この絶縁が破壊され(大気の電離破壊が起こり),火花がとんで,瞬間的に電流が流れる。この種の放電を火花放電,スパークとよぶ。自然が起こす火花放電が雷で,このとき放射される光が電光,稲妻,あるいは稲光lightningで,音が雷鳴thunderである。この火花放電は,雨,雪,ひょう等を降らせる対流雲の発電作用によって生じ,その規模はきわめて大きく,放電路の長さは2~20km(代表値5km)で,中和する電荷は3~300C(代表値25C)である。…

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