化学辞典 第2版 「尿素付加物」の解説
尿素付加物
ニョウソフカブツ
urea adduct
尿素を直鎖状炭化水素,脂肪酸,あるいはアルコールの存在下に結晶化させてできる包接化合物.尿素は普通,正方晶系の結晶をつくるが,付加物においては六方晶系型の結晶をつくる.この場合,尿素分子は水素結合により図のようにらせん状に連なり,中空六角の管を形成している.管の内径は0.5~0.6 nm なので,外径がこれより小さい鎖状分子のみが付加物をつくる.たとえば,ヘプタンは外径が約0.41 nm なので付加物をつくるが,外径が0.6 nm のイソオクタンは管のなかに入れず,付加物をつくらない.また,ヘプタン以下の直鎖炭化水素は付加物をつくらない.らせん構造のため右旋性,左旋性の別がある.尿素付加物は熱または溶剤の作用によって分解し,両成分に戻るので,たとえば,オレイン酸とリノール酸との混合物から両者を分離,精製するのに利用される.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報