分子化合物の一種で、一方の分子種が籠(かご)状、トンネル状あるいは層状の分子規模の空間をつくり、そこへ形状と寸法が適合する他方の分子種が収納(包接)されて生成する化合物。クラスレイト化合物clathrate compoundともいう。空間をつくる化学種をホスト、包接される化学種をゲストという。ホストとゲストとの間に強い化学結合がなくても、形状と寸法さえ適合すれば生成することが多い。ヨウ素デンプン反応で生成する青色物質はその一例で、螺旋(らせん)状に巻かれたデンプンの構造がつくるトンネル状空間にヨウ素原子が一列に包接されている。酵素が基質を取り込むときの選択性も、部分的な包接構造の生成が作用している。メタンハイドレートと俗称される物質は、氷H2Oをホスト、メタンCH4をゲストとするメタン包接水和物(限界組成式8CH4・46H2O)である。
[岩本振武]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
挿入化合物の一種で,ホスト分子またはホスト格子のつくる空間に,第二の分子状の化学種(ゲスト)が取り込まれたもの.たとえば,デンプン分子のつくるらせん構造にヨウ素分子が閉じこめられたヨウ素デンプン,ヒドロキノンのつくるかご状構造にメタノール分子が包接されている付加化合物,希ガス原子が水分子のかご状構造に入っている氷クラスレートなど.IUPAC(1995年)では,空間がかご状の場合,区別してクラスレート化合物とよぶことをすすめているが,日本語では区別しないこともある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…一つの化合物が結晶をつくる際に,その立体的な三次元網目構造によってできる一定の空洞に,他の物質の分子または原子を閉じこめてできる一定の組成比の化合物をいう。包接化合物,また英語ではinclusion compound,enclosure compoundということもある。クラスレートの名はギリシア語のkleithron(かんぬき)に由来する。…
※「包接化合物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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